150602写真1現在審議中の集団的自衛権を行使できるようにする安保関連法案について、4日の衆院憲法審査会で憲法学者3人が憲法に違反するとの意見を述べました。3人は、同審査会の参考人として招かれました。参考人は、与野党が自らの党と考えの近い人を選ぶのが通常です。しかし今回は、自民党推薦の長谷部恭男・早大教授からも「違憲」の指摘がありました。政府与党の考え方が味方によって根底から覆されたようなもの。もはや、安保関連法案そのものが「存立危機事態」です。

さて、安保関連法案の審議に隠れていますが、現在、法務委員会では「取調べの可視化」などを含む刑事訴訟法等の改正案が審議されています。厚労省の村木さんの事件など、密室での取調べによって多くの冤罪事件が生まれました。こうした冤罪事件を「可視化」で防ぐため、民主党政権時代から「検察のあり方検討会議」や「法制審議会特別部会」で議論を重ね、ようやく出てきた法案です。喜んで賛成と言いたいところですが、可視化によって捜査権限が弱まる検察や警察が抵抗したため、①通信傍受法の改正で捜査対象を拡大することがセットになっていたり、②可視化の対象が裁判員裁判の対象となる事件と特捜部などが扱う事件(全事件の約2%)に限定されたりしています。

2日の質疑で、このようなやり方は、①複数の法案を一括して審議・採決に付することで立法府である国会の判断を縛るもので、国会を「唯一の立法機関」とする憲法41条に反しないか、②事件の種類によって取調べが可視化されたりされなかったりするのは「法の下の平等」を定める憲法14条に反しないか、などを内閣法制局の横畠長官に尋ねました。

横畠長官は、①に関して、「趣旨、目的」が同じであれば複数の法案を一括で審議採決しても問題ないとの答弁でしたが、捜査権限にブレーキをかける「可視化」と捜査権限が拡大する「通信傍受」の「趣旨、目的」がなぜ一緒なのか、上川法務大臣からも納得できる説明はありませんでした。

また、②に関して、横畠長官は、「可視化」は取調べの適正な実施に資する補助的な手段に過ぎず、被疑者の権利ではないから憲法14条の問題にはならない、との答弁でした。憲法31条で、すべての人に適正な刑事手続を受ける権利が保障されています。これを無視するような発言であり、極めて問題です。

「法の下の平等」を満たすためには、今回のような全事件の2%の可視化ではなく、全事件の可視化を目指していかなくてはならないはず。安保関連法案と同様、政府が提出した「違憲」の法案に国会がお墨付きを与えるわけにはいきません。断固闘っていきます。