通常国会も終盤となり、衆院法務委員会では今国会最後の法案として「テロ資金提供処罰法改正案」を審議しています。従来の法律では、テロ計画者に対し、テロをやりやすくする目的を持って資金などを提供する者(一次協力者)だけが処罰対象でした。
今回の改正案は、FATFというテロ資金対策を行う国際機関の勧告を受け、政府が国会に提出したものです。最大のポイントは、一次協力者に加え、準一次協力者(=テロをやりやすくする目的を持って一次協力者に資金などを提供する者)、二次協力者(=一次協力者からテロ計画者への提供をやりやすくする目的を持って資金などを提供する者)、その他協力者(=相手が誰であれ、テロのために利用されるものだと知って資金などを提供する者)まで処罰できるようにすることです。
複雑ですが、これまではテロ計画者に直接協力する者しか処罰されなかったのに、直接協力者の協力者や、そのまた協力者、さらにそのまた協力者・・・、と処罰範囲が無限に広がる可能性があります。街中で何気なく募金したお金がテロ組織に流れていた場合、疑いがかけられるおそれもあります。
テロ撲滅はもちろん重要ですが、テロ対策の名の下に捜査機関が暴走しないようにしなくてはなりません。そのためには、疑いがかけられた人に無理やり自白させる取調べが行われないよう、取調べを可視化(録音・録画)するべきです。取調べの可視化については、4年前の村木さんの冤罪事件をきっかけに、今もなお法務省の諮問会議で検討しています。しかし、今回の法案で処罰対象とされる事件まで可視化の対象となるかは微妙な情勢です。
谷垣法務大臣は、過去に「巨悪を眠らせちゃいけない、ですから、検察は頑張らなきゃいけない」と答弁するなど、取調べの可視化に慎重です。しかし、村木事件で、検察も違法、不当な取調べで冤罪を産み出すことが国民周知の事実となりました。11日の質疑では、大臣に対し、「巨悪を眠らせないという大臣の立場であればこそ、可視化の範囲を広げていくべきではないか」と質すと共に、不祥事を起こした検察の幹部が、自己の立場をわきまえず、諮問会議で可視化に消極的な発言をしているのは問題だと指摘しました。
大臣は、「検察も、いろいろな問題が起きて、国民からの信頼も揺らいだのだから、検察への信頼をきちっと取り戻せるような道筋を歩まなければいけない」と答弁しました。今回の法改正は、テロという巨悪を未然に防ぐために小悪の段階から目を光らせようとするものです。しかし、処罰対象を広げることで捜査権力の暴走という別な巨悪の危険も高まります。「巨悪を眠らせない」ようにするには、取調べの可視化が必要不可欠です。