IMG_3070先日、平成17年に栃木県の小学1年生の女の子が殺害された事件の容疑者がようやく逮捕されました。報道によると、容疑者のパソコンにはインターネットからダウンロードした児童ポルノ写真や児童ポルノに類するアニメがあったそうです。

こうした児童ポルノの所持(保管を含む)について、従来の児童ポルノ禁止法では、不特定多数の人に提供したり、公開したりする目的がない限り処罰されませんでした。しかし、最近のインターネットの発達で児童ポルノの被害者が増え続けていることや、処罰を強化すべきとの国際社会からの要請もあります。「自己の性的好奇心を満たす目的」で所持する場合も処罰すべきではないかということで、私を含め衆院法務委員会の理事会に参加する与野党の議員で児童ポルノ禁止法の改正案を議論してきました。

処罰を強化することについては全員異存がなく、処罰範囲が不明確にならないよう「児童ポルノ」の定義を具体的にしたり、他人から勝手に送り付けられたものがたまたま家やパソコンにあったケースなどを処罰対象から除いたりすることでも、合意しました。

もっとも議論になったのは、ずっと前から所持していたものを法改正後も所持し続けているケースをどう扱うかです。自民、公明、維新の議員からは改正後1年の猶予期間内に処分しないと処罰対象になるとの案が出されましたが、この考え方は注意しないと憲法39条に反する可能性があります。

憲法39条では、「何人も、実行の時に適法であった行為・・・については、刑事上の責任を問われない」としており、過去に合法であった行為を後付けの法律で処罰することはできないためです。したがって、以前は「自己の性的好奇心を満たす目的」で所持、保管することが合法であった以上、法改正後も過去の行為を処罰することはできません。にもかかわらず、今もなお所持し続けているケースをすべて処罰するとなれば、実質的には合法であった過去の行為を処罰するのに等しくなってしまいます。

協議の結果、法改正後も所持し続けている場合であっても、「自己の性的好奇心を満たす目的」がなければ処罰しないという解釈を国会答弁で明らかにすることで合意し、4日の法務委員会での枝野議員の質疑に対し、改正案提出者の一人である私がその旨答えました。

時代と国民の要請に沿う立法は必要ですが、憲法のルールを踏み越えた立法は立憲主義に反します。今回の改正でもそれを意識しながら、与野党で知恵を出し合いました。集団的自衛権の行使を議論する安倍政権には、そうした知恵が見られません。