「静謐(せいひつ)」とは静かで落ち着いている、という意味です。先週お伝えしたとおり、今の国会は「静謐」とは程遠い状況ですが、それにもかかわらず30日、政府は衆議院に「皇室典範」の改正案を提出しました。「皇室典範」は皇族の範囲や皇位の継承資格など皇室制度の基本を定める重要な法規範です。天皇陛下が「日本国の象徴」となった現行憲法の施行の際に大改正されましたが、その後は改正されたことがありません。

改正案の審議は「静謐な環境」で行わなくてはならない、というのが与野党の共通認識です。このままでは審議入りできません。こうした事態を憂慮した森英介・衆議院議長は、異例ですが、1日、私を含む与野党の幹部を集めて、①皇室典範の改正は先送りできない課題であり、静謐な環境を確保して最優先で成立を図る、②予算委員会の集中審議と党首討論の開催に向け、与党はさらなる努力を行う、③「比例定数削減法案」と「副首都法案」の審議方法は、与野党が互譲の精神をもって協議する、という三つの「思い」を伝えました。

国権の最高機関たる国会のトップに立つ議長の発言は重い意味を持ちます。翌2日、中道の私と自民の鈴木幹事長、そして両党の国会対策委員長ら6名で対応策について会談。鈴木氏からの提案は、皇室典範改正の審議を優先し、その間は「比例定数削減法案」と「副首都法案」の審議を中断する、そして集中審議と党首討論は開催に向け努力する、というものでした。

これに対し、私が「皇室典範の審議が終わったら、審議を中断した2法案はどうするのか」と尋ねると、「成立を目指す」との答え。「それでは野党の理解が得られず、『静謐な環境』が整わない。皇室典範の審議はできないのではないか」と指摘した上で、「我々は他の野党と対応を協議するので、自民党も2法案にこだわる維新とよく話し合って欲しい」と要請しました。

すると鈴木氏から「今後の協議は国対委員長以下に委ねたい」との提案があったため、「協議に入る前に幹事長間で、現在が議会制民主主義にとって危機的状況であるという認識に立ち、与野党の筆頭である両党が中心となって事態打開を図っていくことを確認したい」と述べると、鈴木氏も同意して15分程度で会談を終えました。

一方で、自民党は、連立政権を組む日本維新の会から、2法案につき「最大2回の会期延長を含め、今国会で成立させる」との文言が入った覚書を締結することを求められているようです。議長の思いも野党の意見も無視して与党だけで法案を成立させようという態度は、国会軽視の極みだと言わざるを得ません。自民党は、議長からの異例の言葉と維新からの法外な要求の板挟みにあい、ひとり静かにしている「静謐な環境」に陥ってしまったようです。議会制民主主義を守るのか、壊すのか。自民党の矜持が問われています。