今月1日で、自衛隊は発足から70年となりました。令和6年版の「防衛白書」の表紙には、鍛冶(かじ)が刀を鍛える様子が描かれています。その説明には、「自衛隊は発足以来、『刀を抜かないために』必死で刀を鍛えてきました」と書かれています。その努力もあって、この70年間、日本は刀を抜かずに平和を守ることができました。
これまでの功績には感謝しながらも、最近の自衛隊の不祥事の多さは目に余るものがあります。昨年12月のパワハラ、セクハラによる245人の処分にはじまり、12日には、特定秘密の漏洩などによって121人、海上自衛隊の「潜水手当」の不正受給によって65人、基地内の食堂での無銭飲食によって22名の隊員が懲戒処分を受けています。
まだ調査中ですが、潜水艦の修理契約を結んでいる川崎重工から「裏金」によって接待や物品の提供を受けた多数の隊員も懲戒処分される見込みです。深刻なのは、処分対象とされたのは証拠が残っている事案だけで、これがすべてではないということ。そして、懲戒処分は組織内の処分ですが、「潜水手当」の不正受給者のうち4人はすでに警察に逮捕されていて、刑事罰を受ける者が今後増えていく可能性もあるということです。
なぜ、これほどまでに不祥事が続くのでしょうか。関係しそうな事情として、防衛省の担当者は、急速な少子化などによって自衛隊員にふさわしい能力を持つ人材を採用しにくくなったことを挙げていました。
昨年度でみると、会社で言えば正社員にあたる「一般曹候補生」は7千人強の採用計画に対し採用数は約5千人、任期付社員にあたる「自衛官候補生」は1万人強の採用計画に対し採用数は約3千人、計画達成率は、それぞれ69%と30%に過ぎません。その結果、自衛官全体の定員割れも年々増え、3月末の段階で約2万4千人に達しています。
政府は5年間で防衛費を約2倍にする計画を立てていますが、いくら刀(防衛装備品)を買い込んでも、鍛冶(隊員)がいなければ刀を鍛えることができず、宝の持ち腐れになります。任期付きの「自衛官候補生」の採用方法を見直すなど、志願者の意欲と能力が高まりやすいような仕組みを検討すべきです。
不祥事が続くもう一つの原因は、自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣にあると思います。自衛隊員は、「強い責任感をもって専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」と宣誓します。責任感の欠如した最高指揮官の下では、「強い責任感」をもって刀を鍛え続けるのは困難です。