今年の流行語大賞、年間トップ10に「アーバン・ベア」という言葉が入りました。市街地に出没するクマを指していますが、クマの危険さよりも愛らしさや恰好よさを感じさせます。しかし、岩手など実際にクマの危険にさらされている地域では、いつクマが出てくるか分からないという意味で、「アーバン・ベア」というより「朝晩ベア」の状況です。

現に、クマによる人身被害の全国統計では、11月末の時点で、早くも過去18年間で最悪の193件、212人に上っています。これまでは、件数では2010年度の145件、人数では2020年度の158人が最悪でしたので、異常な増え方です。私の実家は雫石町の住宅街にありますが、そのすぐ近くでも先日クマが出没し、騒動になりました。

5日の環境委員会では、こうした事実を取り上げて、従来と異なる「異次元のクマ対策」が必要だと主張し、質疑を行いました。現在環境省では、クマを「鳥獣保護法」の「指定管理鳥獣」に改め、駆除計画を立てた都道府県に交付金を支給することを検討中です。この検討を急ぎ、クマが冬眠に入っている冬の間に結論を出すべきではないかと尋ねました。伊藤大臣は、「早急にクマの専門家による検討会を設置」するとした上で、「新年度が始まるまでには結論を出して欲しいと(事務方に)強く指示している」と答弁しました。

さらに、クマの駆除を行った自治体などにクレームが殺到することを取り上げ、「こうした行為をなくしていくためにも、指定管理鳥獣に指定し、クマが捕獲の対象であることを全国に知らせた方がいいのではないか」と尋ねると、再度「指定管理鳥獣の指定に関してなるべく早く結論を出したい」と答えた上で、自治体やハンターの皆さんに対し、「人身被害を防止し、人とクマのすみ分けを図るために真摯に捕獲作業に取り組んでいることに深く感謝を申し上げたい」との御礼の言葉がありました。

農水省からも、クマ侵入を防ぐ広域電気柵の設置を支援するため、予算措置にしっかり取り組むとの答弁がありました。残念だったのが、法務省の答弁。住宅地にいるクマをハンターが撃つことは、鳥獣保護法で処罰の対象です。しかし、人命などへの危難を避けるため、やむを得ずにクマを撃ったハンターは、罰すべきではないと誰しも思うはずです。

私は、門山・法務副大臣に「住民のために命がけで頑張るハンターが発砲をためらい、被害が生じてはならない。刑法の『緊急避難』が成立し、罰せられないということを、政治家として明言すべきだ」と迫りましたが、何度尋ねても「裁判所が証拠に基づいて個別具体的に判断する」と繰り返し、答弁を避けました。金融政策や少子化対策のように「異次元」と言いながら中途半端で終わることのないよう、クマ対策の強化に引き続き取り組みます。