我が家では、妻が家計を管理し、私は毎月小遣いをもらっています。私が銀行員だった新婚時代から、ずっとそうです。そんな家庭で、1年前に残業代が増え、すでに生活費などに使われていたとします。この先も、子どもの教育費、住宅ローンの返済、自宅の防犯工事などで出費は目白押しです。半年ぐらい経ってから、夫が突然、「あの時に残業代が増えたんだから、小遣い増やして還元してくれ」と言ったら妻は何と答えるでしょうか?我が家も含め、普通の家庭であれば「何言ってるの?」と一蹴されるのが目に見えています。

こんな例えを持ち出しつつ、8日の財務金融委員会では、鈴木財務大臣に対し、「岸田首相は過去2年間の税収入の増えた分を減税や給付で国民に還元すると言っているが、『還元』と考えられるか」と尋ねました。鈴木大臣は、神妙な面持ちで「税収入の増えた分は、すでに使った。減税をするなら国債を発行しなければならない」と驚きの答弁。「還元」というなら、原資が必要なはず。岸田首相が強調する「還元」という言葉は、「妄言」に過ぎなかったことが明らかになりました。

しかし、なぜこのように、国債すなわち借金に頼った、まやかしの「還元」が行われるのでしょうか。それは日銀が「異次元の金融緩和」を続けているためです。政府がいくら借金をしても、その際に発行する国債は日銀が超低金利で買い取ってくれます。その結果、政府が借金を増やして大判振る舞いしても、返済負担は少なく済むのです。

一方、超低金利の「副作用」として、急激な円安による物価高が生じています。この日の質疑で、植田日銀総裁は渋々このことを認めました。そして、物価を上げる金融政策を続ける言い訳として、「近いうちに(物価)水準が下がってくる」と述べました。しかし、昨年来、その見通しは外れ続け、3か月ごとに発表される新たな物価見通しの都度、日銀は予想物価を引き上げています。日銀の物価見通しが甘いということは、黒田総裁の時代から私が何度も指摘してきましたが、一向に改善の気配はありません。

植田総裁に対し、「日銀が誤った物価見通しに基づいて金融政策を続け、現在の物価高を招いていることに責任を感じないのか」と尋ねると、植田総裁は、責任の有無については答弁を避けつつ、「見通しの誤りがあったことは認めざるを得ない」とし、「今後、いろいろなデータをきちんと分析して、見通しが適切に行われるよう努めたい」と答弁しました。

日銀の「虚言」で「異次元の金融緩和」が続き、原資なき「還元」につながったことも明らかになりました。今国会も、権力者の「妄言」や「虚言」で私たちの暮らしや仕事が振り回されることのないよう、国民の代表として「諫言」と「提言」に努めます。