20日、臨時国会が始まりました。通常であれば開会式の後、首相の所信表明演説が行われますが、今回は二つの理由で見送られました。一つは、統一教会との密接な関係や女性へのセクハラ疑惑が報じられていた細田博之・衆議院議長が健康上の問題を理由に突如辞任し、後任の議長を選ぶ必要が生じたこと。ただし、細田議長は、議長は辞めても衆議院議員は続けると表明しており、「健康上の理由」は方便の可能性もあります。

もう一つは、激戦となっている二つの補欠選挙の投開票を22日に控え、首相の演説が選挙向けのパフォーマンスになるのを避けることです。にもかかわらず、岸田首相は演説でぶち上げる予定だった「所得税減税」の検討を、20日に与党側に指示しました。姑息なやり方ですが、そもそも物価高対策として「所得税減税」を行うことは適切でしょうか。

まず、先の通常国会では復興所得税の「流用」を含む防衛増税を掲げていました。減税する余裕があるなら、なぜこれまで増税を主張してきたのでしょうか。国民を殴っておいて後から傷をさするようなやり方です。むしろ減税で需要を増やせば、さらに物価が上がる危険があると専門家は指摘しています。さする時に「紙やすり」を使うようなものです。

実際、昨年、英国のトラス新首相が所得税減税を主張したところ、さらに物価が上昇して就任後わずか45日で辞任に追い込まれました。また、2008年、時の福田康夫首相は物価高対策で定額減税を打ち出しましたが、その後ほどなくして辞任。結局減税も見送られました。岸田首相は衆議院の解散権に加えて国家財政までもてあそび、その地位を守ろうとしています。しかし、失敗した宰相たちと同じ道を歩んでいるように見えます。

一方、立憲民主党では、18日の「次の内閣」で「緊急経済対策」を決定しました。さらなる物価高を招かないよう配慮しつつ、物価高等で厳しい状況にある中低所得者や中小企業、農業者などに重点的に給付を行うことが中心です。ガソリン税等の「暫定税率」を停止し、1リットル当たり約25円値下げすることも盛り込んでいますが、これは本来の税率に戻すもので岸田首相の減税とは違います。海外の化石燃料の値上げが苦にならないよう、省エネや再エネを進める脱炭素の取組みを強化しました。円安による物価高の原因となっている、日銀の「異次元の金融緩和」を正常化することも以前から提案しています。

国民の負担を増やすのか減らすのか、物価を下げるのか上げるのか分からない、「どっちつかず」の岸田政権の経済対策と、支援を必要とする方々には積極的に支援を行い、物価を下げることに注力する立憲民主党の緊急経済対策。どちらが適切か見極めて頂きたいと思います。ぜひ23日からの国会論戦にご注目ください。