2日、大谷翔平選手が、日本人初となる米国メジャーリーグの本塁打王に輝きました。世界中から強打者が集まるメジャーリーグで、しかも最もパワーが必要とされる本塁打の数で、日本人がトップに立つことは困難だと見られてきました。まして、投手として活躍しながらとなると、誰も想像しなかったはずです。途方もない「壁」を乗り越えた大谷選手は、名実ともに「世界一の野球選手」です。来季の年俸は、それに報いるものになるはずです。

一方、日本社会では「壁」を乗り越えても報われない人がいます。仕事を頑張って収入が一定金額を上回ると、配偶者の扶養から外れて社会保険料を支払うことになる「年収の壁」が存在するからです。「年収の壁」には2種類あり、従業員が100人以上の企業に務める人が直面する「106万円の壁」と、それ以外の人が直面する「130万円の壁」です。

ただし、「106万円の壁」を越えると手取り収入は減るものの、社会保険料を納めることで厚生年金や傷病手当金、出産手当金をもらえるようになるため、まったく報われないというわけではありません。問題は「130万円の壁」を越えて厚生年金ではなく国民年金に加入する人たちです。この場合、年収が130万円になると保険料の負担が約27万円発生し、手取りがその分減少してしまいます。

それにもかかわらず、配偶者の扶養に入っていた時と同じ給付しか受けられず「払い損」となるのです。年収を157万円以上にしないと「払い損」を取り戻すことはできませんが、そこまで一気に年収を上げるのは容易ではありません。その結果、年収を130万円以下に抑える「就業調整(働き控え)」が起こり、人手不足の要因となっているのです。

岸田政権はその解決策として、年収が130万円を超えても、それが一時的な事情によるものであれば、連続2年までは配偶者の扶養から外れないようにする方針を打ち出しました。しかし、これでは3年目以降の働き控えを防ぐことができず、問題の先送りに過ぎません。また、一時的な優遇措置とは言え、年収130万円以下なのに社会保険料を支払っている未婚者、シングルマザーなどとの不均衡が拡大します。

私自身は、年収130万円を越えるすべての勤労者を対象として、一定の年収に達するまで国が「就労促進手当」を支給するのがよいと考えています。例えば、年収130万円の段階では27万円を多少上回る金額を支給し、年収200万円程度に達するまで徐々に支給額を減らすようにします。扶養から外れた人の「働き損」をなくすと共に、もともと扶養に入っていない人の手取りを底上げすることができます。「働いても報われない壁」を放置せず、「働いたら報われる壁」に転換することで、人手不足の解消につなげるべきです。