岸田政権は、来年秋から紙の保険証を廃止し、健康保険の情報を紐づけたマイナンバーカード(マイナ保険証)に一本化する「マイナンバー法等改正案」を先の通常国会に提出。立憲民主党は反対しましたが、数の力で成立させました。そもそもマイナンバーカードを取得するかどうかは国民の自由です。しかし、紙の健康保険証が廃止されることになると、国民は保険診療を受けるために、マイナンバーカードの取得が事実上強制されます。
しかも、政府の調査によると、マイナ保険証に他人の情報を紐づけられたトラブルが7372件もあり、他人の医療情報が見られる状況になっていたり、保険診療が認められずに窓口で10割の医療費負担を求められたりする事態も生じていました。高齢者施設からは、入所者のマイナンバーカードや暗証番号の取得、管理はできないという声も出ています。保険証を廃止してマイナ保険証に一本化する政府の方針には、無理があります。
5日の閉会中審査において、立憲民主党の長妻昭・政調会長は「来年の秋に保険証を廃止するという方針を変更し、保険証を持ちたい人は持てるようにするべきだ」と何度も訴えましたが、加藤厚労大臣は方針を変えようとはしませんでした。
その一方で、今回のトラブルを受けて政府は、受診の際にマイナ保険証だけでなく紙の保険証も持参するよう呼び掛けたり、来年の秋以降も申請があれば紙の保険証の代わりに「資格確認書」を交付するとしたり、高齢などで申請が困難な方には申請なしで「資格確認書」を交付する方針を示したりしています。
これでは、紙の保険証を残すのと変わらないか、かえって面倒になりそうです。いったい何のために、紙の保険証の廃止にこだわり続けるのでしょう?
政府の支離滅裂な対応を見る限り、「デジタル田園都市国家構想」という岸田政権の目玉政策の中で、「マイナンバーカードの普及を強力に推進する」としていることや、昨年10月に河野デジタル担当大臣が「保険証の廃止」を突如宣言してしまったことにより、保険証廃止の方針を変更したら政権のメンツにかかわると考えている、としか思えません。
しかしながら、民間企業が顧客の現金払いをキャッシュレス払いに変えて欲しいと思ったら、現金決済を拒否するのではなく、キャッシュレス決済の方が安全・安心・便利だと思われるよう努力して、顧客の理解や協力を得るようにするはずです。岸田政権も自らのメンツにこだわって紙の保険証を性急に廃止するのではなく、マイナンバーカードを安全・安心・便利なものにする努力を重ね、徐々にマイナ保険証に切り替えていくべきです。