岸田首相が衆議院を近いうちに解散するという噂が広がっています。4年間の任期は、まだ半分以上残っています。解散総選挙で民意を問う「大義名分」はあるのでしょうか。まして、今は各地で地震が頻発し、北朝鮮のミサイル等に破壊措置命令が発せられるなど、いつ何時、緊急事態が生じるかも分かりません。

解散によって全ての衆議院議員が身分を失っている間に緊急事態が生じ、しばらく選挙が困難になった場合、国会はどうすればよいでしょうか。私たち立憲民主党は、憲法の定める参議院の緊急集会が臨時的に国会の役割を果たせばよい、と考えています。

一方、自民党の新藤議員が「長期にわたって衆議院不在が予想されるような有事が発生した場合でも、(衆参の)二院制国会を機能させるため、憲法の明確な要件に基づく緊急事態時の議員任期延長などの措置を講じておくことは、立憲主義の観点からも極めて重要」と述べるなど、衆議院の憲法審査会では憲法改正を急ぐべきと主張する勢力もあります。

しかし、もし参議院の緊急集会では不十分だと本気で思うのであれば、このまま解散総選挙を迎えることはできないはずです。1日の憲法審査会で、新藤議員に「憲法改正をしないまま衆議院を解散し、長期にわたって選挙困難な事態が生じた場合にどうするのか」と尋ねたところ、まともな答えはありませんでした。議員任期を延長する憲法改正にこだわるのであれば、解散総選挙で国民の信を問う前に、憲法改正の国民投票で信を問うべきです。

もう一つ、解散の前にやるべきことがあります。1日に発表された政府の「こども未来戦略方針」には、「速やかに少子化対策を実施することとし、財源不足は必要に応じて『こども特例公債』を発行する」、要は借金で賄うと書かれています。少子化対策だけでなく、防衛や社会保障、公共事業など予算は膨らむ一方です。今は、金利が低いため政府の借金が増えても利払いは少なく済んでいますが、将来的には増えていきます。

1月の予算委員会で、防衛だけでなく少子化対策、金利上昇に伴う国債費の増加などを考慮した中期財政フレームの提出を求めた際、総理は「国民の皆さんに説明するための資料を作っていきたい」と答弁していました。しかし、待てど暮らせど出てきません。

2日の財務金融委員会で、「いつ出せるのか」と鈴木財務大臣に迫ったところ、「少子化対策の国民負担がどうなるかは、年末にならないと決められない」と呆れた答弁。国民負担を示さずに「異次元の少子化対策」を並べるのは、レストランのメニューに値段が書いていないようなものです。現時点で、岸田首相に衆議院を解散する資格はありません。