戦後78年、日本は「専守防衛」を掲げ、他国の領土を攻撃しないこととしてきました。しかし、岸田政権は、昨年末に「防衛三文書」を閣議決定し、中国や北朝鮮などの脅威に対抗するため、米国から「トマホーク」を400発も購入するなど、日本が「敵基地攻撃能力」を持てるようにしました。これに使う経費などを工面する「防衛財源確保法案」の審議が財務金融委員会で行われています。19日は、この法案に関係する安全保障委員会との「連合審査」を行い、鈴木財務大臣のほか、林外務大臣、浜田防衛大臣への質疑を行いました。

私からは、まずG7の外相会合を終えたばかりの林外務大臣に対し、「G7各国が中国の国債を購入することへの見解」を尋ねました。中国の国債は運用資産として妙味があり、資産を増やすという意味では買うメリットがあります。一方、日本が中国の国債を買えば買うほど中国政府は資金を集めやすくなり、軍事力の強化が進むというデメリットもあります。

林大臣は、「中国が軍事力を広範かつ急速に増強させていることは国際社会の深刻な懸念事項だ。同盟国、同志国との連携によって、いろいろな意味で対応していかなければならない」と答弁しましたが、具体的な方策については何も述べませんでした。

そこで、浜田防衛大臣に対し、「中国の軍事力の脅威と立ち向かう自衛隊員をはじめとする防衛省関係の年金資金の一部が中国国債の購入に充てられるのは問題ないか」と尋ねると、「年金資金の運用は所管外である」と他人事のような答弁。防衛力の強化のため、自衛隊員の処遇を改善して将来もらえる年金を増やしたとしても、その年金資金が中国の軍事力強化に回るのであれば、かえって日本の防衛を危うくするのではないでしょうか?自衛隊員など国家公務員の年金運用を担当する鈴木財務大臣を含め、あまりに無責任です。

また、鈴木財務大臣には、①この法案では今後5年間に政府が新たに必要とする17兆円の防衛費のうち3兆円余りしか確保できず、「防衛財源確保法案」という名称はまやかしであること、②令和5年度の予算はすでに成立しているので、実際にこの資金が必要となるのは令和6年度以降なので成立を急ぐ必要はないこと、を指摘しました。

防衛財源だけでなく、「異次元の少子化対策」の財源を確保する必要もあります。「少子化対策の予算規模が見えてから、これも含めた財源の確保法案を作って来年の通常国会で審議すべきではないか」と鈴木大臣に尋ねると、「防衛増税への協力をお願いする前提として、政府が財源確保の努力をしていることを国民に示すために法案を提出した」という官僚答弁でした。「攻め」の財源確保のために中途半端な法案を通し、他国の脅威を減らして国力を維持する「守り」が疎かになる「拙守防衛」となったのでは、意味がありません。