2日、今国会で初めてとなる衆議院の憲法審査会が開かれ、「大災害や有事などで選挙が困難となった場合に国会議員の任期を延長できるよう、憲法を改正するべきか」という問題などについて、与野党の議員が持論を述べました。

与党側だけではなく、野党側からも「緊急時に国会機能を維持するために任期延長の憲法改正は必要であり、条文作りに入るべきだ」という意見が相次ぎました。しかしながら、私は、以下の理由などから、条文作りは「時期尚早だ」と発言しました。

まず、手続き上の理由として、参議院に配慮した慎重な議論が必要であるということを挙げました。憲法では、衆議院の解散によって衆議院議員がいない間に緊急の必要が生じたとき、国会の代わりに参議院の緊急集会を開いて案件を処理することとしています。緊急集会は、十分な任期を持つ議員が常に存在する参議院だけに認められる権限なのです。

選挙が困難な場合に衆議院議員の任期延長を認めるということは、緊急集会が開催される可能性を狭めるということになり、参議院の権限を弱めます。参議院の利害に関する問題を、衆議院が先走って議論するのは「越権行為」です。

さらに、現実的な理由として、選挙が困難となるような緊急時には、任期を延長して選挙を先送りするのではなく、選挙を急ぐべき場合もある、ということも述べました。すなわち、大災害によって被災地で議員が死亡した場合などは、選挙を行わなければ被災者の代表を欠いたまま国の復旧・復興の議論を進めることとなります。議員任期の延長による選挙の先送りが、常に国会機能や民主主義を維持するものだとは言えないのです。

12年前の東日本大震災では、大槌町の町長が津波で行方不明となり、町長選挙が行われるまでの半年近くの間、一時は総務課長が職務代理者となるなど、民主主義が機能しない状況が続きました。復旧復興の足かせとなったことは否めません。選挙人名簿のバックアップの仕組みや避難先から投票できる仕組みがあれば、こうした事態は避けられました。

この教訓を生かし、上記のような仕組みを整えた上で、非常事態になったら、参議院の緊急集会で必要最小限の国会機能を維持しつつ、速やかに選挙を行って通常の国会機能を取り戻すという方法の方が、憲法改正で議員任期を延長するよりも、民主主義的だと思います。

「選挙が困難なら任期延長」という制度は、権力の任期延長のために不人気の政権が濫用しかねません。被災地の議員として、結論を焦る議員らに、あえて水を差しました。