18日、立憲民主党のネクスト財務金融大臣になって初めて予算委員会の質疑に立ちました。私が最初に取り上げたのは、岸田首相が安倍元首相の「国葬儀」で引用した「勇とは義(ただ)しき事をなすことなり」という盛岡出身の新渡戸稲造先生の言葉です。この言葉をはじめ、日本人の道徳観が英語で記された新渡戸の著書「武士道」が、日露戦争の終結に大きな役割を果たしたことを、NHKの中継を通じて全国に紹介しました。

当時、枢密院議長を務めていた伊藤博文は、戦争を早期に終わらせようと、米国に特使を派遣して和平条約の仲介を依頼しました。その際、日本を理解してもらうためにルーズベルト大統領に手渡されたのが「武士道」です。大統領は、この本に感銘を受け、自費で大量に購入して親しい米国議員や各国に駐在する米国公使にも贈ったそうです。そして、大統領のあっせんで「ポーツマス条約」が締結され、日本の勝利という形で戦争が終わりました。

仮に「武士道」という本がなければ、中立国だった米国が日露戦争終結の仲介に入ることはなかったでしょう。その場合は戦争が長引き、日本もウクライナのように国力に勝るロシアの侵略を受けていたかもしれません。現在、我が国の安全保障のために防衛力を増強すべきだという議論が盛んです。「こうしたハードパワーだけではなく、『武士道』のように、日本に敬意や親しみなどを持ってもらうソフトパワーの強化にもっと力を入れるべきではないか」と岸田首相に進言しましたが、その後の答弁を聴く限り、残念ながら、この言葉が岸田首相に響いた感触はありませんでした。

私が担当する金融の関係では、日本銀行が「異次元の金融緩和」に固執して超低金利を続けていることが、米国などとの金利差の拡大による円安を招き、物価高に拍車をかけていることを指摘し、黒田総裁の責任を問いました。

黒田総裁は、約10年前に2%の物価安定目標を2年で達成するために「異次元の金融緩和」を始めたものの、日銀の物価見通しがことごとく外れ、物価の低迷が長く続きました。そして今、物価が3%程度上昇しても超低金利を続けています。「物価が安定的に上昇するには、賃金の上昇が必要」だからだそうです。しかし、10年前に黒田総裁は、「物価だけ上がって賃金が上がらないということはない」と断言していました。話が違います。

こうした数々の失態を取り上げ、「金融政策を正常化、柔軟化するためにも、今すぐ退くべきではないか」と黒田総裁に迫りましたが、「金融緩和がまったく失敗したというのは事実に反する」と的外れな反論をして辞任を否定しました。恥も外聞も責任感もなく、地位を守ろうとする態度は、新渡戸の「武士道」とは余りにもかけ離れています。