インターネットの普及により、誰もが伝えたいことを、いつでも、ほとんど無料で発信できる時代になりました。ツイッターなど世界中に多くの利用者がいるSNSを使えば、発信した情報は瞬く間に世界の多くの人に伝わります。しかも一旦発信された情報は永久にネット上に存在します。「表現の自由」を、より豊かに効果的に行使できるわけです。
しかし、この利点を悪用し、芸能人やスポーツ選手、犯罪被害者などに対し、ネットを使った匿名の情報発信で誹謗中傷し、相手の心身にダメージを与える事件も後を絶ちません。女子プロレスラーの木村花さんのように、自殺に至ったケースもあります。こうした卑劣な行為に制裁を加え、再発を防ごうとするための二つの法案が法務委員会で審議中です。
まず政府提出の法案は、刑法の侮辱罪の刑罰を重くするものです。これまで刑法の中で最も軽かった「拘留または科料」という刑罰に加え、悪質な事案は「1年以下の懲役、禁固」で処罰できるようにします。ただし、処罰対象となる行為自体は今までと変わりません。
一方、私たち立憲民主党提出の法案は、刑法に「加害目的誹謗等罪」という罪を設けます。ネット上の誹謗中傷の多くは、「○○は死ねばいいのに」といった自分の意見や感想のような形で発信されます。こうした行為は侮辱罪で処罰できないため、新たな罪が必要です。併せて、被害者が加害者に民事上の損害賠償を求めやすくする規定も盛り込んでいます。侮辱罪の刑は変えませんが、政府の案より被害者のためになることは明らかです。
加えて、政府の「侮辱罪厳罰化法案」が通れば、これまで侮辱罪では現行犯逮捕が困難だったものが法律上は容易にできるようになります。現行犯の逮捕は、警察だけでなく一般人もできます。しかも、「表現の自由」を守るため、侮辱罪よりも刑が重い名誉棄損罪では公人への批判などは合法とされていますが、侮辱罪にそうした定めはありません。このままでは現行犯逮捕を避けようと、表立った場所での政権批判が萎縮してしまいそうです。
そこで、11日の法務委員会で、警察を所管する二之湯国家公安委員長に対し、「街頭活動やデモ行進において、一般市民が『安倍総理は嘘つきだ』と言い放ったら現行犯逮捕されるのか」と尋ねたところ、答弁は最後まで二転三転して不安は消えませんでした。
もしも現行犯逮捕が可能なら、時の最高権力者は、国会で118回の虚偽答弁を行ってもお咎めなしなのに、一般市民は、表立った場所でたった1回本当のことを言っただけで現行犯逮捕されるという理不尽極まりない結果となります。「被害者のため」ではなく、「権力者のため」の法改正を認めるわけにはいきません。