22日、東京高裁は、スリランカに強制送還された二人の男性が国に損害賠償を求めた訴えについて、請求を一部認めました。男性側は、出入国在留管理庁(入管)が、難民申請を認めないとする法務大臣決定を40日以上も隠し、強制送還の前日になってようやく知らせたため、決定を取り消す裁判を起こせないまま強制送還されたと述べていました。

判決は、男性側の言い分を認め、憲法で認められた男性側の「裁判を受ける権利」を入管が侵害し、憲法が保障する「適正手続の保障」や「個人の尊重」にも反するとしました。そもそも裁判所が行政機関の行為を憲法違反とすることはめったにありません。とりわけ、入管の送還行為について違憲判決が出たのは今回が初めてだと言われています。1978年の最高裁判決をきっかけに、「法律で在留資格が認められない外国人には、憲法上の人権もない」という考え方が広まったからです。当然ながら、法律よりも国の最高法規である憲法の方が上位にあります。40年以上経って、裁判所はようやく常識的な判断を示しました。

他方、翌日の23日に、同じスリランカ人で名古屋入管に長期収容されて3月に病死したウィシュマさんの妹、ワヨミさんが日本を去りました。彼女はその妹と共に、姉の死の真相を知ろうと5月に来日。入管に関係書類の公開を求めると、ほぼすべてを黒塗りにして提出してきたほか、亡くなる前のウィシュマさんのビデオを代理人とともに見たいという要望も、入管は13日分を2時間に編集したものを遺族だけに見せるようにしました。

それでもワヨミさんはビデオを一部見ましたが、体調が悪化したウィシュマさんへの非情で非道な入管の対応にショックを受けて嘔吐し、心身の不調などで目的を達しないままスリランカに帰国しました。ビデオの開示は、入管を監視する役割を担っている法務委員会でも開示を求めていますが、入管は一向に応じようとしません。

その理由について、入管は「保安上の観点」と「死者の名誉、尊厳の観点」を言い続けています。21日の立憲民主党の法務部会において、私から「入管は死者の名誉、尊厳を守りたいようだが、ウィシュマさんの生前に彼女の名誉、尊厳を守っていたのか」と尋ねると、黙ってしまいました。「保安上の観点」についても、私が「憲法で国権の最高機関とされている国会への説明責任に優先するほどのものか」と繰り返し尋ねても答えません。

入管は、法務省に属する組織です。その法務省を、政府は英語で「Ministry of Justice」と表現しています。直訳すると、「正義の省」です。法務大臣はじめ法務省に属する人たちは、今のままで自分の組織の名前を世界に発信できるのでしょうか。非情かつ非道な入管組織を根本的に改める必要があります。