3日、菅首相が自民党総裁選挙に立候補しないことを突然表明。29日に決まる新たな自民党総裁が首相の座を引き継ぐと見られます。それにしても、なぜ今なのでしょうか?

菅首相によると「新型コロナ対策に専念したい」からということですが、これでは今までのコロナ対策が中途半端だったことを自ら認めるようなものです。

本当の理由は、これまで中途半端で後手に回ったコロナ対策に党内外から不安や不満が高まり、自民党総裁選挙に出馬しても勝ち目がないと踏んだためなのでしょう。菅首相が「人類がコロナに打ち勝った証し」にすると豪語していた東京オリ・パラでしたが、それが終わる前に菅政権の方がコロナに打ちひしがれて終わることになったのは皮肉です。

思い起こせば、約1年前にも安倍前首相が持病の悪化を理由に突然辞任しました。ただ、当時の自民党執行部は「新型コロナへの対応もあり、早急に新たな体制を確立して政策を前に進める必要がある」として、党員投票は行わず1週間で菅氏を総裁に選んでいました。

それよりはるかにコロナ禍が拡大しているのに、今回は党員投票を行って、約2週間をかけて総裁選挙を行うようです。その後、新首相を選ぶために臨時国会を開く必要もあります。もし新首相が衆議院を解散して総選挙を行うとすれば、衆議院の任期満了日である10月21日までに選挙を終えることは事実上不可能となりますが、これはおかしなことです。

なぜなら、衆議院の解散は任期満了前に民意を問う必要がある場合に行うものです。任期満了の後に民意を問うのは矛盾していると思います。公職選挙法により、総選挙は任期満了日の30日前から行えるため、そこで民意を問えば良いだけの話です。

もっとも、この公職選挙法の定めには例外が設けられています。任期満了前の少なくとも30日前から国会をずっと開いていれば、任期満了日から24日~30日間は選挙を先送りできるというものです。今から国会を開き、コロナ対策など重要課題を議論した結果、任期満了後に選挙を行うのであれば法律通りであり、無用な解散権の行使を避けられます。

加えて、野党がかねてから要求してきたにもかかわらず、菅内閣が臨時国会召集を拒否してきた「憲法53条の違憲状態」を解消することもできます。菅首相と自民党の勝手な都合により、臨時国会を開かず長い政治空白を設け、任期満了直前に衆議院の解散権を濫用することは許されません。菅首相が曲がりなりにも「新型コロナ対策に専念したい」と言うのであれば、まずは臨時国会を開くべきです。