首都圏では、コロナの感染爆発によって医療が追いつかず、入院先が見つからないまま重症化して自宅で亡くなる方が出てきています。今の政府は、「救える命を救えず」という事態を防ぐ、という最低限の役割すら果たせていません。同じ思いを、名古屋入管に収容中に病死したスリランカ人女性、ウィシュマさんに関する「最終報告書」に接して感じました。

法務省の「出入国在留管理庁調査チーム」が作成し、7月中に公表予定だった最終報告書は、今月10日にようやく公表されました。別添として、彼女の体調が悪化し始めた1月15日から亡くなった3月6日まで、毎日の施設内での様子が具体的に書かれた資料があります。それによれば、彼女の食欲が衰え、食事や薬を吐き戻したことから、2月3日以降、入管独自の判断でOS-1という経口補水液を支給していました。

OS-1は、脱水症の食事療法に用いられるものですが、注意書きには「医師から脱水症の食事療法として指示された場合にお飲みください。」「・・・多く引用することによって原疾患が治癒するものではありません。」「医師・・・看護師・・・の指導に従ってお飲みください。」などと書かれています。

にもかかわらず入管は、①医師の指示なくOS-1を支給、②体調不良で嘔吐したウィシュマさんを見て、病院で点滴を受けさせるべきと支援者が申し入れたのに対し、「OS-1を与えている」などと言って拒否、③看護師が指示したOS-1の量を与えず、といった対応をしていました。亡くなる前日には、看守との面接でもほとんど話ができないほど衰弱し、横たわるウィシュマさんに対し、病院に連れて行こうともせず、看守が「OS-1を飲みたいか」と言って上体を起こし、コップに入ったOS-1を彼女の口元に近づけ、飲ませていました。

この間に体重は10キロほど減っていました。それ以外にもウィシュマさんの容態を見て見ぬふりをし、「見殺し」にしたことが読み取れる記述が様々ありました。16日に非公開で開催された法務委員会の理事懇談会の冒頭、野党筆頭理事の私から入管庁に対し、「命を救えなかったことについて、入管はどのように考えているのか」と尋ねると、「ウィシュマさんの死因が明らかにならず、そのため、どの時点でどういう対応をするのが適切だったのか踏み込んだ検討はできていない」と責任逃れの呆れた答弁でした。

自宅ではなく、人の命を預かる施設で日々監視していた方が亡くなったのに、その原因すら分からないというのは言語道断です。入管には、救える命を救おうとする意思も能力もなく、そもそも人の命を預かる資格すらないことが明らかになりました。死因を含めて真相を解明した上で、入管を抜本的に改革し、国際社会に恥ずかしくない組織に変えていきます。