今月に入ってから記録的な大雨で各地に大きな被害が発生しました。異常気象は大雨に限りません。岩手県でも、今年は久々の大雪に始まり、非常に早い桜の開花、季節外れの霜や長時間のひょうによる農作物への被害、例年より約2週間も早い梅雨明けと目まぐるしく気候が変わります。世界的にも異常気象が続いています。私たちの命と暮らしを脅かす気候変動への対策は、官民挙げて取り組まなければなりません。

ただし、こうした対策の中には「やってる感」だけで中身を伴わないものも多くみられます。イメージアップのために環境配慮などをしているようにごまかす企業などの振る舞いは、環境への配慮を示す「グリーン」と、英語で「うわべを取り繕う」という意味の「ホワイトウォッシング」を組み合わせて「グリーンウォッシング」と呼ばれます。

16日に日銀が決定した「気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するための新たな資金供給」もそうです。この資金供給は、日本の気候変動対応に資する投融資を行う金融機関に対して、それに見合う金額を日銀が長期間低金利で貸し付けるものです。また、金融機関が日銀に預けた当座預金のうち貸付額の2倍については、マイナス金利の適用対象から外れます。一見、日銀が気候変動対応を後押ししているように見えます。

しかし、何が「気候変動に資する投融資」にあたるのか、金融機関が行う投融資の内容やその効果についてどこまで公表させるのか、いつからこの資金供給を始めるのかなど、肝心なことがはっきりしません。「これを議論のきっかけにしたい」という担当者の説明に愕然としました。日銀が本気で気候変動問題を解決しようとするなら、省エネに資する断熱住宅の建築・リフォームへの融資や、環境保全に資する農業や林業向けの融資などを増やした金融機関に対して支援を行うなど、具体的で効果のある対策を打ち出すべきです。

こうした「やってる感」だけで見せかけだけの「〇〇ウォッシング」は、ほかにもあります。東京五輪で来日する外国人を一定の場所に閉じ込め、ウィルスが広がらないようにする「バブル方式」は、大会前から選手が行方不明になっており、ウィルスどころか人間すら閉じ込められないことが判明しました。「バブルウォッシング」と言わざるを得ません。

16日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は広島、コーツ副会長は長崎を訪ねて平和を尊重する姿勢を示しました。しかし、バッハ氏の「五輪開催のためには誰もが犠牲を払わねばならない」との発言、コーツ氏の緊急事態宣言中の五輪開催につき「完全にイエスだ」との発言は撤回されていません。まさに「ピース(平和)ウォッシング」です。「やってる感」にごまかされてはなりません。