「画竜点睛を欠く」とは、物事を立派に完成させるための最後の仕上げを忘れることを意味します。ある高名な絵描きが、竜の絵の仕上げに睛(ひとみ)を入れたらその竜が天に昇ったという、中国の言い伝えから生まれたことばです。

14日、法務委員会の野党議員を代表して、政府提出の「入管法改正案」につき、与党側と2対2で断続的に約4時間の修正協議を行いました。この法案は、日本に在留する資格を失った外国人が帰国する前に一時的に収容される「入管施設」において、不透明な手続きで満足な食事や医療提供もないまま長期間収容されるなど、基本的人権を無視した扱いが行われているため、これを改めることを一つの目的としています。

日本人にとっては直接関係ないようにも思えますが、この問題を放置しておくと海外に在留する日本人の処遇に影響しかねません。また、国際社会での日本の評価が下がって来日外国人が減少し、国内の経済や社会に悪影響が及ぶ危険もあります。

そこで、この法案では、入管施設に収容されずに生活できる「監理措置」という制度を設けたり、そもそも在留資格を失わずに生活できる「補完的保護対象者」という資格を設けたりすることにしています。ただ、制度をどのように運用するかは、これまで同様、入管の裁量に委ねられています。修正協議では、①入管施設に収容する場合の入管の権限と裁量をなるべく小さくし、②収容前に裁判所の審査を受ける仕組みを導入する、ことなどを提案しました。

①については、「監理措置」を広く認めて利用しやすくする修正や、収容期限に上限を設ける修正などを与党と合意。しかし、②について与党は、入管の判断の透明化を図ることは合意したものの、裁判所の審査については拒否し続けました。

与党の「入管を信頼して欲しい」との主張に対し、私からは、3月に名古屋入管で長期収容中のスリランカ人女性が病死した件で真相解明がおざなりであることを指摘。最低限、法案を成立させる前に女性が亡くなる前の様子を録画したビデオを、遺族と法務委員会の主要メンバーに対して開示すべきだと要求しました。

しかし、この点も最後まで合意できず、与野党の国対委員長の協議に委ねることになりました。結果的に、自民党の森山国対委員長がビデオ開示を拒否したため、もう一歩のところで修正協議は決裂してしまいました。現在、亡くなった女性のご遺族が来日中で、16日に葬儀が予定されています。ご遺族が強く望んでいたビデオ開示を、葬儀の前に決めることができず極めて残念です。「画竜点睛を欠く」状態を解消すべく、引き続き努力します。