28日、東京五輪・パラ五輪での国内観客の入場について、6月に判断が先送りされました。記者会見で橋本聖子・大会組織委会長は、「無観客という覚悟を持っている」と述べました。3月に海外観客ゼロが決まり、国内観客も4月に結論が出るはずでした。25日から東京などで3回目の緊急事態宣言が発令されたため、6月の判断も厳しいものになりそうです。

来日する選手や関係者については、入国後の毎日の検査と日本在住者との1m以内の接触禁止など厳しい条件を付けた上で、入国3日目から試合に参加できることが決まりました。現在、一般人は、原則として14日間は宿泊施設等で待機した後でないと外出できません。それでも感染力が強い新型コロナの変異株が世界各地から流入し、国内で感染を広げています。このやり方で変異株の感染拡大を防げるのか、不安が残ります。

東京五輪・パラ五輪が決定した際に「おもてなし」という言葉が流行しました。無観客試合となってテレビ等で観戦するしかなく、試合以外でも選手との交流ができないとなれば、当然「おもてなし」の機会はありません。変異株の感染が拡大する危険を背負ってまで、東京五輪を開催する意義があるのか、立ち止まって考えるべきです。

一方、法務省の下にある出入国在留管理庁(入管)は、様々な事情で国内の在留資格を失った外国人に対し、「おもてなし」どころか「人間扱いしない」傾向があります。先週も取り上げた名古屋入管で亡くなったスリランカ女性につき、死亡直前の血液検査の結果が明らかになりました。専門家によると、「意識障害を起こす重症の糖尿病」で、「即入院して治療すべきだった」としています。にもかかわらず、収容した名古屋入管は「詐病の疑い」があるとして放置し、死に至らしめました。

これ以外にも、収容施設内で病気や自殺で亡くなった外国人が後を絶ちません。28日の法務委員会で「なぜ繰り返されるのか」と上川大臣に尋ねたところ、「その都度対応してきた」と入管の対応に問題ないような答弁。そこで、「自身の法務大臣在任中に入管で何人が病気や自殺で亡くなったのか」と尋ねると、答えられませんでした。今回で4人もの外国人が上川大臣の在任中に亡くなっているのに、まったく危機感なく口先だけの対応です。

スリランカ女性は日本の子供に英語を教えたいという志を抱いて来日。日本語学校に留学中に同居男性からお金を取られDVを受け、退学を余儀なくされて在留資格を失いました。こういう方に温かく接するのが「おもてなし」の国ではないでしょうか。五輪憲章では「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指す」ことがオリンピックの目的だとしています。入管の対応を改めない限り、日本には五輪開催の資格がある、と胸を張って言えません。