3月25日、東京簡易裁判所は、黒川弘務・元東京高検検事長に対し、賭博の罪で罰金20万円を命じました。昨年4、5月の緊急事態宣言の自粛要請期間中、東京都内のマンションで報道関係者3名と合計4回も賭けマージャンを行ったと認定したものです。

ちなみに、黒川氏は昨年6月に辞職した際、約6千万円の退職金を受け取っています。20万円の罰金では、何の痛みも感じないでしょう。不祥事を起こした中央省庁の幹部が辞職した場合、いったん退職金が支払われても、後から退職金の一部を「自主返納」させるのが通例です。最近では、公文書改ざん問題で辞職した佐川宣寿・元国税庁長官や、女性記者へのセクハラ問題で辞職した福田淳一・元財務省事務次官が、「自主返納」しました。

2日の法務委員会で、「黒川氏は自主返納したのか」と上川法務大臣に確認すると、「自主返納されていない」と驚きの答弁。刑事罰を受けていない佐川氏や福田氏が「自主返納」しているのに、刑事罰を受けた黒川氏が「自主返納」しないのは社会常識に反します。「自主返納してもらうよう黒川氏と交渉すべきではないか」と上川大臣に繰り返し尋ねましたが、「すでに法務省の処分は終わっている」として、交渉する気はまったくありませんでした。

また、そもそも「法務省の処分」自体が甘過ぎます。賭博行為をした国家公務員には、一般的には「減給または戒告」の懲戒処分が行われます。そして、対象者の地位の重さ、行為の悪質さ、内外への影響の大きさいかんでは、さらに重い処分もありえます。

ところが、黒川氏の場合は、懲戒処分は行われず、監督処分である「訓告」のみでした。一方、佐川氏は20%の減給処分を3か月、福田氏は20%の減給処分を6か月、それぞれ受けています。これに関し、上川大臣に「黒川氏の処分は妥当だったと思うか」と尋ねましたが、「当時の関係者がよくよく考えた結果だ。処分の時に大臣ではなかったので評価すべきでない」と答弁を避けました。

黒川氏の事件の処理については、国会に情報提供される前に報道機関に情報が漏れていた疑いも生じています。この点について、「黒川氏の件で検察とマスコミの癒着が疑われているのに、また癒着が疑われることが起きた。内部調査を行うべきではないか」と質しましたが、的外れな理由を述べるだけで、調査すら消極的でした。

上川大臣の答弁は、すべて検察出身の法務官僚の言いなりです。彼らと立ち向かって組織風土を改革していこうという気概がまったく感じられません。真の「法の支配」を取り戻すため、統治能力を欠く上川法務大臣の資質を、今後も厳しく問いただしていきます。