18日、昨年の緊急事態宣言中に新聞記者らと賭け麻雀をしていた黒川弘務・元東京高検検事長が、賭博罪で略式起訴されました。昨年7月、東京地検は、「掛け金が少ない」などとし、元上司の黒川氏につき「起訴猶予」(罪は成立するが悪質でないとし、不起訴にする処分)としていました。しかし、昨年12月、検察審査会(検審)はこれを認めず、「起訴相当議決」を下しました。検察はその後再捜査を行い、この度罰金刑を科す方針となったのです。検審が「検事長は違法行為を自制し、抑止すべき立場だ」と厳しく指摘した結果、検察も「起訴猶予」を撤回せざるを得なくなったようです。

菅原一秀・元経産大臣が選挙区内の有権者に香典や生花を送った公選法違反事件についても、検察は昨年6月に「起訴猶予」としていましたが、12日に検審が「起訴相当議決」を下しました。検察の「起訴猶予」の判断が、有権者からくじで選ばれた11人から成る検審によって立て続けに覆されました。検察の常識は国民の非常識だったと言わざるを得ません。

加えて、菅原元大臣の件について、検察は、「検察審査会法」の無理な解釈によって、検審の審査を妨害していました。

第一に、事件を「告発をした者」は検審に審査の申立てができる、というのが法の定めです。今回の申立人も告発をしていましたが、検察が、「申立人の告発は検察によって受理されなかったので、『告発をした者』にあたらない」と主張した結果、審査の申立てが却下されたのです。ちなみに、検察が受理しなかった理由は極めて形式的で修正可能なものでした。つまり、検察は受理しようと思えばできたし、受理しないとしても告発人に即座に連絡して再告発の機会を与えることもできました。にもかかわらず、半年以上も放置していました。

第二に、検審の要求があれば、検察は「審査に必要な資料」を提出しなければならない、というのが法の定めです。今回、検審は、菅原氏を「起訴猶予」にした捜査記録の提出を求めましたが、検察は、これを拒否しました。「『審査に必要な資料』かどうかは検審が単独で判断するのではなく、検察も加わって判断できる。その結果、本件は『審査に必要な資料』にあたらないと判断した」というのが検察の見解です。

どちらの解釈も、検察にとって都合のよい条件を法律の条文に加えて、検審の審査を邪魔しています。17日の法務委員会でこのことを取り上げ、検察の解釈がどうなっているのか確認しましたが、法務省の幹部はまともに答えず、何度も審議が中断しました。検察の常識では、「黙秘権」は国会の追及から検察の自由を守るためにあるようです。黙秘権は検察の追及から国民の自由を守るためにある、という国民の常識からかけ離れています。