今国会の法務委員会において、政府与党は少年法の「改正」案を審議、可決しようとしています。少年法は、罪を犯した若者のうち20歳未満の「少年」に適用される法律です。

従来の少年法では、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた」場合を除き、少年の事件は原則として通常の裁判所ではなく家庭裁判所で裁かれてきました。家庭裁判所の審理は非公開で、少年のプライバシーに関する報道が制限されます。罪が確定し、社会復帰させるのが相当でない少年は、刑務所ではなく少年院に送られて教育や職業訓練を受けます。

こうした「少年の健全な育成」を目的とした扱いについて、法務省は見直しを進めてきました。選挙権の年齢や民法の成人年齢が18歳に引き下げられたことが理由です。最終的には少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることは見送られましたが、18、19歳の若者を「特定少年」(仮称)とし、17歳以下の少年とは異なる扱いにする方針です。

例えば「公文書偽造罪」など最低1年以上の懲役刑を定めた罪を犯した場合、特別の事情がない限り家庭裁判所から検察官に「逆送」されます。そして、検察官が起訴した後は報道の制限がなくなるなど、一般の刑事事件と同じように扱われます。道を誤った18、19歳の若者に対し、従来よりも厳しく処分する「改正」となっています。

一方で、少年が刑法上の罪で検挙された数は平成16年から減少し続け、令和元年は前年より14%も減少しました。差し迫った必要もないのに、他の制度に合わせるとの理由で少年法を「改正」するのは安易です。その前に、この年代の若者がコロナ禍で受けた影響を把握し、「少年の健全な育成」に支障があればそれを取り除く努力をするべきです。

総務省の昨年の労働力調査によれば、15歳から24歳までの若者のうち、家事も通学もしていない「無業者」が前年の約1.5倍に増え、37万人になりました。25歳から44歳までの「無業者」は横ばいとなっていることから、就職時期にある20歳前後の若者にコロナ不況のしわ寄せがきていると言えます。

また、大学生協連の学生生活実態調査(昨年秋に実施)によれば、18、19歳が大半を占める大学1年生のうち、大学生活が充実していると答えた人の割合が前年の89.3%から56.5%に急落しました。コロナ禍で思うように大学に通えない影響が出ています。

厳しい環境に置かれている若者に対し、追い打ちをかけるような少年法「改正」を急ぐのではなく、就職や学業の支援にもっと力を注がなくてはなりません。