18日、財務金融委員会で麻生大臣らに質疑を行いました。日本銀行が新たに始める「地域金融強化のための特別当座預金制度」が本当に「地域金融強化」につながるのか。その観点で、黒田日銀総裁にも質問しました。この制度は、今後3か年で、地域金融機関が6%以上の経費を削減したり合併や経営統合などを行ったりすると、「報酬」として、日銀に預けている当座預金に通常より0.1%金利を上乗せしてもらえるというものです。

しかし、経費削減や合併などを金利上乗せの条件とすれば、採算が合わない店舗や人員が削られ、業況が芳しくない事業者との取引が減っていくなど「地域金融強化」どころか、地域の金融機関が弱体化し、地域経済にとってマイナスになる危険があります。この点につき、黒田総裁の見解を尋ねると、「地域経済の持続的な発展に貢献する方針であることを要件としているので、この制度は企業や家計への貸出しを下支えする」と答弁。

そこで、「地域経済の持続的な発展に貢献する方針」の意味を尋ねると、「企業や家計の資金繰り支援を行い、コロナ後を見据えた企業の対応を後押しする経営方針」ということでした。まったく具体性がなく、経費削減の方とは異なり、明確な数値基準が定められていません。これでは、「地域金融強化」とは名ばかりで、金融機関のリストラだけが進みかねません。

そもそも地域の金融機関にリストラを促すような制度を日銀が始めなくてはならなくなったのは、日銀自体に責任があります。日銀の黒田総裁が就任して8年近くになりますが、就任時に掲げていた「お金の量(マネタリーベース)を2倍にし、年2%の物価上昇率を2年程度で達成する」という「公約」は、この期に及んでも達成されていません。

お金の量は当時の4倍以上に増やし、今も際限なく増やし続けています。おかげで株式市場はバブル以降の最高値となっていますが、コロナの影響で最近の物価上昇率はマイナスです。おまけにマイナス金利を長年続けたため、融資で稼げなくなった金融機関の経営が悪化し、今回の「リストラ促進制度」を導入せざるを得なくなったのです。

日銀は、3か月に一度、今後2~3年の物価上昇率の見通しを示す「展望レポート」を公表しています。黒田総裁が就任してから、2年後に物価は2%程度になる見通しが長く続きましたが、常にこれを大きく下回る結果で実態は「願望レポート」でした。

ここ最近は見通しの時点で2年後に0.7%程度の物価上昇率に過ぎず、「願望」どころか「絶望レポート」になっています。金融政策が失敗したツケを地域金融機関に回し続け、それが難しくなると今度は地域経済に回すなど、もってのほかです。