米国の大統領選挙は、史上まれに見る激戦となりました。自ら新型コロナウィルスに感染、入院したトランプ氏が、選挙戦終盤に激戦区などで大規模集会を繰り返し、猛烈に追い上げたためです。一方のバイデン氏は、感染拡大防止に細心の注意を払い、大規模集会を極力避けていたようです。トランプ氏のやり方は、選挙戦術としては長けているのかもしれませんが、国民の命を守るべき大統領の振る舞いとしては、大いに疑問です。

加えて、トランプ氏は投票結果が不利と見るや、郵便投票に不正があったと言い出しました。接戦となった三つの州で、郵便投票の一部無効などを訴えて裁判を起こしたのです。郵便投票の制度はトランプ氏が勝った前回選挙と基本的に変わっておらず、言いがかりに過ぎないような裁判です。コロナの感染防止のため、郵便投票を促すべき大統領が、郵便投票を無きものにしようとするのは矛盾であり、民主主義を軽んじていると言わざるを得ません。

その一方で投票率は66%を上回り、コロナ禍にもかかわらず120年ぶりの高水準となるようです。そして、バイデン氏の得票数は2008年のオバマ氏を超えて史上最多の約7200万票に達しました。投票によって政治を変えようという有権者が多かったことを示しています。現時点でトランプ氏とバイデン氏のどちらが勝利したかは分かりません。ただし、少なくとも米国の民主主義はトランプ氏に勝ったと言えると思います。

日本では、1日に「大阪都構想」の住民投票が行われました。大阪市を廃止し、四つの特別区に分ける案について賛否を問うものです。5年前に続き2度目の住民投票でした。こちらも賛成派と反対派で大激戦となりましたが、米国の大統領選挙と違って、投票率は62%と前回よりも4ポイント以上も下がりました。大阪市民にとって身近な問題ですらこのような結果です。仮に、ワクチンや治療薬が普及する前に衆議院の解散総選挙が行われれば、コロナの感染を恐れて投票率が大幅に低下するかもしれません。

しかし、このような時だからこそ、選挙での投票を通じて有権者の意思を政治に反映させていくべきだと考えます。例えば、前政権はコロナ対策として、学校の一斉休校や布マスクの全戸配布、時期尚早の「Go Toキャンペーン」などを、一部の政治家と官僚で決め、実行しました。こうした民意とかけ離れた政策を繰り返さないようにし、政治が国民の方を向くようにするためには、一人でも多くの方に投票所に足を運んでもらわなくてはなりません。

夏以来、私は投票率の10%アップを目指す署名運動を全国の仲間とともに行っています。米国の大統領選に学び、日本の民主主義を守るため、地道な活動を続けていきます。