23日は、私の勤めていた日本長期信用銀行が経営破たんした日です。バブル崩壊後、長銀は不良債権問題で経営不安が高まり、国内外の金融機関との提携や合併に失敗して国有化され、取引先にご迷惑を掛けました。次期国会でも財務金融委員会に所属します。22年前の苦い経験を忘れず、二度と金融危機が起こらないよう政府や日銀に物を申していきます。

さて、菅首相の目玉政策の一つに、「地方銀行の再編」があります。菅首相は、官房長官時代に「地方銀行は数が多過ぎる」と語っていました。地方銀行は全国に102行ありますが、何を根拠に「多過ぎる」と言っているのか定かでありません。

地方銀行の主な取引先である中小企業は日本全体で約350万社、そこから個人企業などの小規模事業者を除いても約50万社あります。50万社の資金需要に応えていくのに、102行という数は決して多いとは言えないでしょう。

一方で、地方銀行の経営環境が厳しくなっているのは事実です。その主な要因は、数が多過ぎることではなく、安倍政権が「地方創生」に失敗し、地方から東京圏への人口流出が加速したことや、日本銀行が2%の物価安定目標を達成できず、超低金利が長く続いていることです。政府や日銀のせいで経営環境が厳しくなったのに、その責任を負うべき菅氏自身が、地方銀行に再編して数を減らせと迫るのは、勝手過ぎます。

加えて、コロナ禍で非常に業績が悪化し、事業の継続が困難になっている中小企業が増加しています。こうした中小企業は、経営や資金繰りの実態をよく知る地方銀行の地元支店に対し、資金面をはじめ様々な支援をお願いしたいはずです。

地方銀行の再編によって支店が少なくなれば、中小企業が必要な支援を受けられず、コロナ倒産やコロナ廃業が増えかねません。中小企業がコロナ禍を乗り越えるため、今は、政府が地方銀行の再編を後押しするよりも、地方銀行の機能を強化することを優先すべきです。

例えば、コロナ禍で借金が膨らみ、今後も業績が不透明な企業が経営再建に取り組む場合、①国が地方銀行に必要な資本を注入して、取引企業の借入金の負担軽減に協力しやすくしたり、②地方銀行やそのグループ会社が行いうる業務を広げて、必要な人材や情報システムなどを積極的に提供できるようにしたりすることが考えられます。

引き続き地方銀行をはじめ、地域の金融機関の現場の皆さんの声をよく聴いて、地方経済の再生につながる政策を提案していきます。