1日に日銀が発表した、6月の企業の業況判断はリーマン・ショック以来の悪さでした。とくに落ち込んだのが「宿泊・飲食サービス」です。景気が「良い」とする割合から「悪い」とする割合を差し引いた数値(DI)はマイナス90以下。3か月先の見通しでもマイナス80程度です。その影響で米などの消費も減っています。農業関係者から、秋以降の米価下落を心配する声を聞きました。

その農業について、3月末に政府は、新たな「食料・農業・農村基本計画」を決定しました。供給熱量で見た「食料自給率」につき、直近の37%を2030年度に45%にする目標を掲げています。今回が5回目の目標設定ですが、民主党政権下の2010年に「10年後に50%」とした以外は、いずれも「10年後に45%」です。しかも、目標が達成されたことは一度もなく、第二次安倍政権になって以降は、次第に目標から遠ざかっています。

これでは日銀の2%の物価安定目標と同じく、単なる「願望」に過ぎません。また、食料自給率は「国内生産」を「国内消費」で割って計算するため、分子の国内生産が減っても、最近のように分母の国内消費が大きく減ると、自給率が改善します。つまり、国内生産の減少が覆い隠されてしまうのです。

これを放置したままコロナが収束し、国内消費だけが元に戻ったとすると、一時改善したように見えた自給率が以前よりも下がり、食料をますます海外に依存せざるを得なくなるのです。コロナだけでなく、国際紛争や気候変動などで輸入食料が大幅に減少する可能性も考え、いざという時に国内で食料を賄える体制を整えなくてはなりません。

そのために注目すべきは「食料自給力」です。これは、国内の農地や農業者などが最大限の能力を発揮すると仮定した場合の食料生産力を示す数値です。現在、米・小麦等の自給力は1727kcalですが、これは、平均的な日本人が体重を保つのに必要な、1日当たり2169kcalをはるかに下回ります。

2日の野党共同会派の農林水産部会では、岩手県出身で明治大学農学部の作山巧教授をお招きし、「食料自給力」を政府の目標とし、目標達成手段として、「農地」と「農業就業者」を維持・増強する政策を進めていく必要性を伺いました。コロナ禍の今こそ、効率性や収益性という産業的見地だけでなく、「食料安全保障」という見地から農業を見直し、発展させていくべきです。