刑事裁判を野球にたとえると、裁判所は審判、検察官が攻撃側で、被告人と弁護人が守備側。攻撃側が得点(=有罪確定)を挙げるためには、一塁(=起訴)、二塁(=地裁判決)、三塁(=高裁判決)、本塁(=最高裁判決)と進まなければなりません。どこかでアウトになればランナー(=事件)は、グラウンド(=法廷)から退くことになります。

26日、東京地裁は、小沢一郎代議士の秘書だった三人に対し、政治資金規正法の虚偽記載罪に当たるとして有罪判決を下しました。野球で言えば、二塁審判がセーフと判定したようなものです。

しかし、セーフになったとはいえ、このランナーは二塁どころか一塁でアウトになってもおかしくない大暴走でした。捜査の段階では、これまで問題ないと考えられていた政治資金収支報告書への記載方法が罪に当たるとして元秘書らは次々と逮捕、勾留されました。

寄附をしてくれた政治団体が特定の企業や業界団体と縁が深かったり、自分の政治団体の手持ち資金が不足した際に政治家本人が立て替えたりすることはよくあることです。その場合に政治団体と縁ある企業などを寄附者として記載しなかったり、政治家本人の立替金を記載しなかったりすることは、小沢事務所に限らず多くの秘書が当たり前にやっていたことです。

東京地検特捜部がその程度の行為で現職国会議員を含む元秘書を逮捕したのは、他に狙いがあったからです。特捜部はゼネコンから小沢代議士に巨額の裏金が渡っていることを立件するために軽微な事件を口実に逮捕したのです。これは通常「別件逮捕」と言われるもので違法な身柄拘束です。しかも、取調べでは、小沢代議士の関与や裏金の存在を話させようと、脅したり、騙したり、悪質な行為をしていたことが録音テープで明らかになっています。

そのようなことをしても真の狙いは果たせず、特捜部は罪にもならないような別件で起訴したわけです。東京地裁は、判決する前に起訴自体が違法だとして裁判打切り(公訴棄却)にしてもいいような事案です。そんな事案が有罪判決になってしまったのです。

証拠偽造など杜撰、違法な捜査が明らかになった村木事件の反省を踏まえ、検察は、無理筋の事件から「引き返す勇気」を持つことを宣言しました。これで少しは検察の暴走が収まるかと思った矢先、審判が大暴走したランナーを一塁、二塁とセーフにしてしまいました。審判が何でもセーフと判定してくれるのなら、攻撃側はやりたい放題、守備側はやるだけ無駄。もはや野球とは言えません。

三塁塁審は、まともな判定をしてくれるよう祈るような気持ちです。