「投げてよし、打ってよし」の大谷翔平選手に「走ってよし」が加わりました。24日にメジャーリーグ史上初めて、同じ試合で盗塁40個、本塁打40本の「40-40」を達成。しかも40本目は「サヨナラ満塁本塁打」という劇的過ぎる快挙でした。このペースだと前人未踏の「50-50」も可能です。今年加入したドジャースとの契約金は約1千億円と言われていますが、それにふさわしい「千両役者」ならぬ「千億役者」の活躍です。

さて、岩手ではもう一つの「千億単位の価値」の創出に産学官が取り組んでいます。それが国際リニアコライダー(ILC)。「リニアコライダー」は直訳すると「線形加速器」で全長数十キロのトンネル内に設置されます。これを使って素粒子を光速近くに加速して正面衝突させ、その現象を研究して「宇宙の始まり」の解明に取り組みます。そのために世界から優秀な研究者と技術者が数千人も集まり、ILCの周りには国際研究都市が生まれます。

大変夢のあるプロジェクトですが、建設費用のうち日本政府が負担する分は少なく見積もっても約4千億円に上ります。私も長年にわたって超党派議連に入って政府に働きかけてきましたが、「巨額の予算に見合う価値はあるのか」という批判もあり、科学技術予算を司る文部科学省はなかなか動いてくれません。このままでは、中国や欧州が代替施設を作ることになって、これまでの努力が水の泡になってしまいます。

打開策を見出すべく改めて「ILCの価値」を考えてみると、ILCを使って研究を進めることで生まれる価値と、研究成果と関係なくILCを構成する最先端の加速器自体が生み出す価値に分けることができます。前者の価値は、研究を始める前に見通すことは困難です。一方、後者の価値は、現時点でもある程度分かりそうなので、28日にILCの専門家である岩手県立大学の鈴木厚人学長に教えを乞いに伺いました。

その中で、私が注目したのが、原子力発電所から生じる使用済み核燃料のうち「長寿命核種」と言われる部分を取り出し、ILCが発する素粒子の高速ビームの力で「核変換」すれば無害となるまでの期間を著しく短縮できるということです。使用済み核燃料の最終処分場は、北海道の寿都町などで初期の調査が行われましたが、この先どうなるか分かりません。最終処分場がなかなか決まらない最大の要因は無害となるまでの期間が数万年に上ることです。ILCによってその期間が数百年に短縮できれば最終処分の可能性が広がります。

この技術を応用すれば、核燃料を冷却し続ける必要のない「未臨界原子炉発電」を実現し、福島第一原発のような事故を防げる可能性もあります。大谷選手と同様、ILCも未来に希望をもたらす「千億単位の価値」があることを訴え、引き続き誘致を目指して頑張ります。