「虎に翼」というNHKの連続テレビ小説が人気です。戦前・戦中の「男尊女卑」、「軍国主義」による理不尽な境遇を乗り越え、女性初の弁護士と裁判官になる主人公の物語です。今週は、戦禍によって夫らを失い憔悴していた主人公が、「個人の尊重」や「法の下の平等」を定める日本国憲法の公布に励まされ、再び法曹を志すまでを描いていました。
今では当たり前となった、「個人の尊重」や「法の下の平等」をはじめとする憲法の重要な価値が守られるよう、憲法によって国家権力を縛る考え方を「立憲主義」といいます。しかしながら、AIなどデジタル技術の急速な発達によって、グーグルやアマゾンなど、国家に匹敵する権力と富を持つ「巨大プラットフォーマー」と呼ばれる多国籍企業が現れています。いまや憲法の重要な価値を守るには、「立憲主義」だけでは足りず、「巨大プラットフォーマー」を縛る「デジタル立憲主義」が必要なのです。
このことについて、30日に行われた衆議院の憲法審査会で発言する機会がありました。まず、21日にEUで成立したAI法を紹介。AI法は、「デジタル立憲主義」の立場から、AIを開発、利用する「巨大プラットフォーマー」を規制し、個人の尊重や民主主義、法の支配といった近代憲法の重要な価値を守ろうとしています。
その上で、AIなどのデジタル技術については、極力規制しない「デジタル自由主義」の立場や、国家の監視と管理の下に置く「デジタル権威主義」の立場があるが、いずれも極端で問題があるとし、立憲民主党は、党名が示すとおり「デジタル立憲主義」の立場から、バランスの取れた憲法や国民投票法に関する提案をしていると主張しました。
例えば、憲法改正の国民投票の運動期間中に、ネット上で真実に反する情報が拡散し、民意を歪めてしまうことをいかに防ぐかという問題について、「デジタル自由主義」に立って、これを放置することはあり得ません。他方で、「デジタル権威主義」の立場から、公権力が自ら情報の真偽を判断することにすれば、公権力にとって不都合な情報を排除する「デジタル検閲」の疑いが国民に広まり、逆効果になりかねません。
そこで、個人の尊重と民主主義の両面に配慮した「デジタル立憲主義」に沿った対応として、公権力が自らネット情報の真偽を判断するのではなく、民間からの問い合わせに対して必要な情報提供を行うことで、真実に反する情報の拡散を防ぐ方法が望ましいと考えます。
「虎に翼」とは、中国のことわざで「鬼に金棒」と同様の意味だそうです。日本国憲法に「デジタル立憲主義」という新たな考え方が加われば、「虎に翼」と言えるでしょう。