
23日、国会で二つの重要な映像を見ました。一つは、ウクライナのゼレンスキー大統領の演説の生映像です。戦争中とは思えないほど大統領は冷静沈着で、椅子に座ってカメラを正面から見据え、12分間にわたって演説を行いました。日本の支援への感謝に始まり、ロシア軍により原発が危機にさらされ、サリンなどの化学兵器も使用されかねず、多くの国民が避難していることなど、日本が経験した苦境を思い起こさせつつ、国連の改革や経済制裁の継続、貿易禁止の導入、戦地の復興への協力を、真摯な態度で日本に求めるものでした。
会場には300人を超える国会議員が集まり、ゼレンスキー大統領の演説が終わった瞬間、ほぼ総立ちで拍手を送りました。海外の首脳がオンライン中継で国会演説を行うのは初めてのことでしたが、映像の力は大きく、大統領の統率力と説得力が十分に伝わりました。
さて、この日見たもう一つの重要な映像は、大統領演説と異なり、衆議院の法務委員だけに開示されたものでした。名古屋入管に収容中のウィシュマさんが亡くなる3日前に担当の看護師さんと面談した際の映像です。昨年末にも彼女が亡くなるまでの約6時間半の映像を見ましたが、その際に見た映像と入管が作成した最終報告書の記載内容との間に食い違いがあることが分かりました。その食い違いが許容できる範囲のものかどうかを確認するために、政府与党と交渉して10分間ほどの別の場面の映像を見ることになりました。
この場面について、報告書上は、看護師が翌日の精神科医の受診の際に話すべき内容を確認した際、ウィシュマさんは「頭の中が電気工事をしているみたいに騒がしい、耳の奥で波の音がして聞こえづらい、目がぼんやりしている、食事が少ししか食べられない、もう死んでもよいと思うときがあるといったことを話したい旨を述べた」と書かれてあります。しかし、実際の映像を見ると、これらの言葉のほとんどは看護師のものでした。ウィシュマさん自身の言葉で私が聞き取れたのは「死んだほうがいい」という言葉ぐらいでした。
看護師がウィシュマさんの容態を見ながら話した内容について、ウィシュマさんから特に返答がなければ、そのことをもってウィシュマさんが話したことにしたようです。ウィシュマさんは終始苦しそうで、看護師がいろいろ話しかけても反応は弱く、翌日に精神科医を受診させて済むような状態でないことは明らかです。にもかかわらず救急搬送するなど適切な対応を取らなかったことをごまかすため、報告書に虚偽の記載をしたように思えます。
政府与党はこの映像を私たちが見た後も、報告書の記載は虚偽ではないと言い張っています。しかし、それなら映像を早く一般公開すべきです。ゼレンスキー大統領のように映像の力を味方にするのではなく恐れていることこそが、報告書の虚偽を何より物語っています。