年金第三者委員会視察21日、「年金記録確認東京地方第三者委員会」を視察しました。この委員会は、総務省の地方組織である東京行政評価事務所の中に置かれています。委員120人、職員約300人が30の部会に分かれ、都内28か所の社会保険事務所に申し立てられる「消えた年金」問題について救済が必要かどうか調査・検討を行います。そして、救済する場合は、総務大臣名で社会保険庁長官に年金記録の訂正を促す文書を作成しています。

そもそも「消えた年金」とは、過去に国民年金や厚生年金の保険料を納めたにもかかわらず社会保険庁が管理する年金記録に納付の記録が残っていないという問題です。なぜその救済を総務省が担当するかというと、①年金制度を所管する厚生労働省では、身内の社会保険庁の不祥事である「消えた年金」被害をきちんと救済できるか疑わしい、②各都道府県に置かれている総務省の行政評価事務所は、もともと国の行政に関する苦情・相談を受け付けていたため「消えた年金」の救済機関としてふさわしい、からです。

視察で伺った部会では、「昭和48年10月から昭和50年4月まで1年半勤めていたA社の厚生年金が未加入となっているので、訂正して欲しい」とする61歳のBさん(女性)の申立てを審議していました。当時の給与明細など保険料を納めたことを示す直接の証拠はなく、A社も10年近く前になくなり、事業主は死亡、総務・人事担当者も行方不明です。

しかし、部会の調査により、①申立期間内にBさんがA社で雇用保険に加入していた事実、②「正社員であったBさんは厚生年金に加入しているはず」とする当時の上司の証言、③当時の同僚の大半が入社と同時に厚生年金に加入していた事実、などが判明し、全員一致でBさんの申立てが認められました。

部会長を務める冨田弁護士は、

記憶違い、思い込みで申し立てる方もいらっしゃるが、常に国民の味方になって事件を検討している。申立てを認めるかどうか5分5分ぐらいの調査結果が得られれば、救済するようにしている

とのことでした。他に社労士さんや税理士さんなど4人の専門家で構成されるこの部会は、半日で7、8件ずつ事件を処理しているそうで、東京委員会全体では週に200件から300件もの事件を処理しています。

社会保険庁も国民の味方になって年金記録を管理していれば「消えた年金」問題は起きなかったはずです。