19日の財務金融委員会では、内閣提出の関税定率法等の一部を改正する法律案の審議があり、額賀財務大臣に質疑を行いました。

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この法案は、輸出入の際の通関手続の効率化、知的財産侵害物品等の税関での取締強化、バイオ燃料利用促進のための関連関税撤廃などを定めるもので、民主党も賛成の立場です。

そこで、私は、約12年ぶりに1ドル100円割れとなった為替相場についての政府の対応を中心に質しました(チャート)。急激なドル安は好ましくないとする額賀大臣に対し、「政府は既に多額の含み損を抱えたドルを保有しており、ドル買い介入によってドル安を修正するという選択肢は取れないはず」と指摘。

その上で、「現在のドル安の背景にある米国の金融危機を解決するには、米国政府が問題ある金融機関に公的資金を注入するしかない。10年前の日本の金融危機で、日本の宮沢大蔵大臣は米国のルービン財務長官から公的資金注入を要請された。今度は、額賀大臣が米国に公的資金注入を求める番だ」と、ドル安への危機感が乏しい額賀大臣に注文を述べました。

財務大臣も日銀総裁同様、日本の信用を大きく左右する立場です。財務大臣の人事も国会で議論する必要があるのではないでしょうか。


【議事録】
169-衆-財務金融委員会-10号 平成20年03月19日

階委員 民主党の階でございます。
きょうは関税がテーマでございますが、本題に入ります前に、最近の為替相場に関する政府の姿勢などをちょっとお伺いしたいと思います。
まず、額賀財務大臣、今の為替相場なんですが、円高と考えていらっしゃるのか、それともドル安と見ていらっしゃるのか、あるいはいずれでもないと見ていらっしゃるのか、どれでありましょうか。

○額賀国務大臣 基本的には、ドル安に伴う円高傾向という形で見ております。

階委員 今、ドル安というお話がありました。今、一ドル百円を切るような状況になっておるわけでございますけれども、このドル安が日本経済に与える影響をどのようにお考えでしょうか。

○額賀国務大臣 二月のG7においても、為替相場の過度な変動というのは世界の経済成長に望ましくはないという共通の認識を持っております。最近の相場の状況は過度な動きではないかという認識をしておりまして、懸念を持っております。米国では、ブッシュ大統領もポールソン長官も、ドルは強いことがみずからの国の国益につながるということを再三言っております。
私どもは今、こういう為替相場、株安、あるいはまた原油高、米国のサブプライム問題に端を発する金融不安、あるいは経済の減速懸念、そういったことをきちっと注視しながら対応していきたいということ、もう一つは、米欧と我々も緊密な連携をとっていくことが大事であるというふうに思っております。

階委員 米欧との緊密な連携というお話がございましたが、例えば、今のドル安への対応として、より直接的な手段としてドル買い介入などもありますが、為替介入に対する大臣のお考えなどございましたら、お聞かせ願えますか。

○額賀国務大臣 為替介入についてはコメントを差し控えさせていただきたい。

階委員 為替介入、ドル買いをするかどうかに関して、実は私、昨年の十一月七日にこの委員会で大臣にお尋ねした際、日本の外貨準備高、約九千五百億ドル、百十兆円程度の残高があるというお答えをいただきました。また、一円円高になると評価損が〇・八兆円ふえるという政府参考人の答弁もいただきまして、それを踏まえて、外貨保有によるリスクが大き過ぎるので外貨準備を減らすべきではないか、そのような指摘をさせていただきました。
そのとき大臣は、為替相場に影響を与えるという理由で否定的なお話でございましたが、それから約四カ月たつわけでございます。当時は一ドル約百十六円で、今は一ドル百円として計算しますと、〇・八兆円掛ける十六ですか、十三兆円ぐらい評価損がふえている計算になります。そういった中でドル買い介入するということは、外貨保有のリスクをさらにふやすということで、なかなかそういうことはしづらい。要は、為替介入については手足を縛られているような状況ではないかなというふうに考えるわけでございます。
この点につき、御所見ございますでしょうか。

○額賀国務大臣 おっしゃるように、我々は、為替相場それから我が国の円の安定のためにそういう外為で特会という形をつくっているわけでございまして、階先生の分析は分析としてよく受けとめさせていただきますけれども、コメントは差し控えたいと思います。

階委員 なかなかこの点についてはしっかりしたお話を聞けないんですけれども、このドル安の背景を考えてみますと、皆さん御案内のとおりで、サブプライムローンの焦げつきを契機として、米国で金融不安が広がったということがあるわけでございます。
それで、この問題を解決するために、財務大臣として米国の金融財政当局に何か提言などをするお考えはありますか。

○額賀国務大臣 これは、先般の二月のG7の会議におきましても、私は議長国の立場として、アメリカのサブプライム問題が今後どうなっていくかということについて世界じゅうが心配をしておったわけでありますけれども、リスク管理あるいはリスクの再評価の問題があっているわけでございますから、日本の場合の不良債権の処理の経験を語りまして、情報の開示、それから、我々は公的資金を投入して、市場の安心というか信頼を取り戻して金融市場の安定を取り戻したという経緯があります。そういうことをぜひ参考にして、アメリカの金融市場あるいは世界の金融の安定化に努めてほしいというような話をした経緯があります。

階委員 私も十年前、日本の金融不安のときにまさにその渦中におりましたけれども、やはり、最終的には公的資金の導入というところが問題解決に大きくつながったと思っているわけでございます。
それで、今大臣の方から、そういうお話もしているということでございましたけれども、今現在、アメリカの政府は、利下げはどんどんやっていますけれども、公的資金の投入というところまでは踏み込んでいないわけでございますね。
十年前、我が国の金融不安の当時は、米国の当時のルービン財務長官、こういった方が当時の宮沢大蔵大臣に金融機関への公的資金の注入を強く求めていたわけでございます。今度は逆の立場になったわけで、我が国の方からパートナーであるアメリカに対して公的資金の注入などをもっともっと強く提言して、金融不安の払拭に努めていくべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

○額賀国務大臣 私の感触では、米国は日本から何を学んでいるのかというと、一つは、日本の不良債権処理というのはソフトランディング的なところがありました。それで、九八年のああいうアジア通貨危機を迎えて、これではいけないという形で不良債権の処理を本格的に始めたということがあったと思いますけれども、アメリカはむしろその逆で、そういう問題が起これば、きちっと流動性を確保して対応していくという、日本とは逆の立場で対応しているのかなという感じを持っております。
公的資金云々については、この前のG7で日本の教訓としてお話をさせていただいておりますので、それ以上私から言うことはありません。

階委員 ぜひ十年前の我々の貴重な教訓を今のアメリカに授けていただいて、そして、一刻も早くアメリカ発のこの今の経済の不安定な状況を解決するようにぜひイニシアチブを発揮していただいて、今のお話だと何か、一回言ったからもうこれ以上はというように伝わりましたけれども、もっともっと頑張っていただければなと思っております。
それでは、本題の関税のお話に入ります。
まず、また暫定税率という我々にとっては何か余り好ましくない言葉が出てきますけれども、関税の関係の暫定税率がこのまま廃止になった場合、税収や国民生活にどのような影響が及びますでしょうか。

○額賀国務大臣 先ほどの米国の問題については、緊密な連携をとって、お互いにこれは緊迫感、緊張感を持って対応していくことが大事である、そういう共通の認識を持っております。四月の十一日にはワシントンでG7の会議が行われます。
それで、今の暫定税率の話でありますけれども、国民生活に非常に密着した品目の税率が、結果的に暫定税率が失効した場合には引き上がっていくことになるわけであります。
輸入類とか額とか数量がこれまでと同じ程度であるというふうに機械的に計算をいたしますと、二千億円ぐらいの増収になる。主な品目に係るものでは約千六百五十億円、それから加工再輸入減税制度、これは二百九十億円、航空機部分品等の免税制度二十億円。それから、そのほかでん粉等の農産品に係る特別緊急関税制度が失効するとどういうふうになるかというと、国内産業の保護に重大な影響が起こる。これは、輸入価格が一定水準を下回る場合とか数量が上回る場合に自動的に追加関税が上がるというシステムでありますが、国内保護ができなくなるということでございます。
非常にわかりやすく言うと、例えば牛肉の場合ですと、ステーキ用肉百グラム当たり約十五円上昇する。それから紙巻きたばこですね、一箱当たり約十二円の上昇になる。日常生活に関係するようなことではそういうことになります。
〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕

階委員 暫定税率、いろいろな品目があるようでございますが、例のガソリン税のように、延長を繰り返して長く続いているものにはどういうものがあるのか、期間もあわせてお答えいただけますか。

○青山政府参考人 お答え申し上げます。
関税の暫定税率といいますと、もともとは昭和三十五年に、貿易自由化に合わせまして、これへの対応措置ということで、暫定的に、例えば関税割り当てをセットするとかいうような議論で決められたものでございます。
現在、この三月末に期限が到来するのが四百十七でございますけれども、内訳は、いわゆるウルグアイ・ラウンド、十三年前でございますか、九五年以前に合意されておりますような、一定限度までは低税率、無税の枠を設けて、それで、それより高い税率をとる、二次税率は高い税とする、そういうのが六十六ございます。
それからまた、ウルグアイ・ラウンド合意に基づきましていわゆる自由化して、これを関税化したというものがございます。これが八十七品目ございます。
それからあと、国家貿易品目というのがございまして、これが百五十七。さらには、ウルグアイ・ラウンドの際の関係国との合意に基づきまして引き下げを約束いたしました五十一品目、これには例の牛肉なんかも含まれます。それから、その他が五十六ございます。
古いものということで申し上げますと、例えばトウモロコシでございますが、これは昭和四十年度改正におきまして、輸入のトウモロコシを原料といたしますコーンスターチの生産が急にふえたということでございまして、では、これは国内の産業では何が困るかということでございますが、これは、国内の国産の芋でん粉を保護するということで、枠内税率を一〇%といたします関税割り当て制度を導入して、その後、国際交渉等の結果等を踏まえまして、累次の税率引き下げあるいは枠の拡大をやっているというところでございます。
もう一つ申し上げますと、プロセスチーズの原料用のナチュラルチーズでございますが、これは、国産生乳の安定的な引き取りを確保する観点から、昭和四十五年度改正におきまして、枠内税率を一〇%といたします関税割り当て制度を導入しておりまして、その後四十七年に枠内税率は無税とする等々の措置を行いまして、ウルグアイ・ラウンド以降ずっとそのまま継続しているわけでございます。
それからあと、鉛、亜鉛等につきましては、昭和三十九年度の改正におきましてスライド関税というのを導入いたしましたが、この税率につきましても、時々見直しを行った上で今に至っているということでございます。
なお、品目数でございますが、実は、ウルグアイ・ラウンド、九五年からスタートしているものでございますが、これ以前は五千数百品目ございました。これを大幅に見直しいたしまして四、五百にしたという経緯がございます。
私どもの今の考え方は、今ドーハ・ラウンドをやっておりますが、今後、これの終了とあわせまして大幅にまた見直していこう、こういう考え方でやっておるわけでございます。
以上でございます。

階委員 自動車関係の暫定税率でも議論になったことですが、暫定と言いながら、廃止になると国民生活に影響が大きいなどとして長年延長を繰り返してきているわけでございます。今、将来に向けて見直すという話ではございましたけれども、本当に必要な税金であれば、国民的には、暫定というまやかしの表現ではなく、本則の税率にすべきではないかというふうに考えるのでございますが、大臣、この点についてどのように思われますか。

○額賀国務大臣 租特とかそういうものは、ある政策目標を達成するために特例的に定めているものでございますから、本来はやはり整理をしていくことが望ましいんだというふうに思います。
だから、これはきちっと点検をして、本当に必要なものなのであるのかどうか、国民生活や経済の発展のために資するものであるのかどうか、国民の皆さん方に納得していただけるものであるのかどうか、そういう視点からこれはきちっと見直していくことが大事であるというふうに思います。

階委員 今、非常にいいお話をいただきました。ぜひ、そういったことで自動車関係の暫定税率もしっかり見直していただければと思います。
この暫定税率の関係とはちょっと離れるのですが、今回、加工再輸入減税制度の三年延長というのも盛り込まれております。これも、原材料の生産業者にとってはこれが恩恵になるとも思われるのですが、一方で、海外で加工、組み立て、これの外注を促すということで、国内のこういった加工、組み立て産業の衰退を招くのではなかろうかと思うわけでございますが、この点についてはどういった判断でございましょうか。

○青山政府参考人 また少しちょっと歴史の話を申し上げますと、加工再輸入減税制度でございますが、昭和四十四年度に、我が国と外国との貿易の拡大均衡に資するためということで、国際分業体制の確立を目指して、まずは機械類の一部を対象に行われたものでございます。その後、この対象範囲を拡大しておりますが、現在では、繊維製品とそれからあと皮革関係でございます。
先生御指摘の、今の国内産業との関係ということでございますが、むしろ生産の海外展開をせざるを得ない状況にある。したがって、国内に残すべき部分と海外で生産する部分というものを分けまして、国内の加工産業の実態を十分に勘案した上で、むしろこれは、国内の産業を逆に推進するという観点からの制度に今はなってございます。
例えば皮革産業でございますが、これも、国内のなめし革の業界の保護という観点から、今やもう加工賃がかなり高くなっているということもありますので、これを海外展開する、そういうのが実態になってございます。
今回も、これの拡大ということをお願いしているわけでございます。

階委員 あと、環境問題への取り組みも今回この改正法の中で入っていると思うんです。
具体的には、バイオETBEの価格競争力を向上させるという理由で輸入関税を廃するというお話がありますが、これにより、どの程度バイオETBEを混合したガソリンの価格が下がるのでしょうか。

○青山政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のバイオETBE、エチルターシャリーブチルエーテルでございますが、これは、ヨーロッパで使われているバイオ燃料の一種でございまして、ガソリンの添加剤ということでございます。
御案内のとおりでございますが、二〇一〇年までに五十万キロリットルを原油換算で導入するということでございまして、混合率によって異なるものでございますので、一概にどれぐらいになるかということは計算するのは難しいわけでございますが、あえて、輸入価格一リットル当たり百円、七%ガソリンに混入する、これは石連の前提でございます、といたしますと、リッター当たり〇・二円の免税といいますか、減税措置になるということでございます。

階委員 その程度で果たしてどの程度バイオETBE混合ガソリンの使用量がふえるのか疑問に思うわけでございますけれども、財務省として、ほかに環境問題対策として税制面においてどのような取り組みを行っているのか、大臣、その点についてお聞かせ願えますか。(額賀国務大臣「バイオ関係ですか」と呼ぶ)環境保護のための税制ということで。
〔田中(和)委員長代理退席、委員長着席〕

○額賀国務大臣 先般衆議院で可決いただいた税制改正法案では、環境問題などの国民生活に配慮する税制措置の一つとして、バイオ燃料の導入を促進する観点から、バイオエタノールそれからまたバイオETBEを混合して製造される揮発油について、揮発油税を軽減するという新しい措置をつくっております。これによって、揮発油等の品質の確保等に関する法律の改正、所要の制度整備を踏まえて行っていくことでありますが、これによって税制の軽減措置が実現をしていくことと思います。
具体的には、バイオ燃料に含まれるエタノール、バイオエタノールに相当する揮発油税等を軽減するし、揮発油等の品質の確保等に関する法律によってエタノールの混合上限は三%とされておりますから、三%までバイオエタノールがガソリンに混合された場合、バイオエタノール相当分の揮発油税がリッター当たり約一・六円軽減されるということになります。

階委員 時間が参りましたので、最後の質問とさせていただきます。
今回、臨時開庁手数料を廃止するということで、夜間、休日などの通関需要が一層ふえるというふうに思われるわけです。また、水際取り締まりも強化されるというお話でした。そういった問題に対応するためには、職員教育であるとか勤務体制の整備などをきっちりやる必要があると思いますが、この辺についてはどのように取り組んでいくおつもりでしょうか。

○額賀国務大臣 これはもう階委員がおっしゃるとおり、税関においてきっちりと仕事をしていくためには、人員配置を含めた勤務体制、それから職員の教育が大事であるというふうに思っております。
厳しい財政事情ではありますけれども、定員の確保、予算の確保、機構の整備、適切な人員配置等々に全力を尽くしてまいりたい、そしてAEO制度の充実と研修を続けてまいりたいというふうに思っております。

階委員 これで終わります。どうもありがとうございました。