8日、財務金融委員会で与謝野大臣への質疑を行いました。
委員会の冒頭で与謝野大臣より、「破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書」について説明がありました。 報告書には、平成15年11月に破たんした足利銀行の役員の刑事責任追及に関して、

違法配当の罪での告訴を検討したが、平成18年6月に時効が成立したので見送った

旨書かれてありました。 私が勤務していた日本長期信用銀行(長銀)は、平成10年10月に破たんし、当時の役員は違法配当の罪等で告訴され、翌11年6月に起訴されました。しかし、昨年、最高裁で無罪が確定しています。 私は、

同じ違法配当の罪であるにもかかわらず、足利銀行と違って長銀の対応は慎重さに欠け、拙速だった。刑事告訴までする必要はなかったのではないか。

と尋ねました。与謝野大臣は、

起訴するというのは有罪と断定する行為ではない。裁判所の判断を仰ぐ必要があると判断したものだ。

と答えました。 私は、

『起訴は有罪を意味しない』という大臣の見解は正論だ。今回の西松関連献金事件のように、起訴されただけで極悪非道であるかのような報道がされないようにするためにも、大臣のような考え方を世の中に普及させる必要がある。

と述べました。長銀事件や今回の事件では、このことを一層強調しなければなりません。 両者とも、従来適法とされていた会計処理を、東京地検特捜部がある日突然違法と見なし、普通の生活を送ってきた国民を逮捕・起訴するという異例の捜査を行っているからです。 奇しくも、3月2日(小沢代表の秘書逮捕の前日!)の毎日新聞に、「国策捜査だった。今でも怖いんですよ。」という大野木元長銀頭取のコメントが掲載されていました。 長銀出身者、弁護士、そして国会議員として、「行政権の下にある検察が不当に人権を侵害していないか」、しっかり監視していきます。

【参考記事】
 日本経済新聞 2006年4月19日夕刊 与謝野大臣の回想録


【議事録】 171 – 衆 – 財務金融委員会 – 14号 平成21年04月08日

○階委員 
 そして、きょうの質問でございますけれども、先ほどFRC報告について大臣からもお話があったかと思います。お配りされているきょうの資料の中に、平成二十年十二月期のFRC報告書があるかと思います。私、これをきのうざっと見まして、ちょっと気になったところがございましたので、まずそのことについてお伺いしたいと思います。
 この資料の六十七ページをごらんになっていただきますと、足利銀行の経営陣の責任追及についての話が書いてあるわけでございます。破綻したのがたしか平成十五年の十一月二十九日で、その破綻の経営責任とかを問うために、平成十六年二月から内部調査委員会が立ち上がっていろいろと調査をしてきた。その結果が平成十七年の二月と九月に出てきて、その中に、刑事責任についてどういうふうに対応をとるかということを書いているということだと思います。
 そして、この六十七ページを見ていただきますと、刑事責任の追及につきましてはということで、まず、不正融資事案二件については刑事告訴を見送るというふうに書かれております。その後、違法配当事案の責任追及については、当行としての責務を果たすべく対応してきたんだけれども、最後のところ、「平成十八年六月をもって時効が成立いたしました。」というふうに書かれております。
 これを素直に読みますと、時効が成立したので、結局、刑事責任の追及をしなかった、告訴しなかったというふうに読めるんですけれども、なぜ時効になるまで告訴をしなかったのかというふうな疑問があるわけでございます。その点について、事務方で結構ですのでお聞かせください。

○三國谷政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の点は、参考資料として掲げております平成二十年六月三十日に足利銀行が作成いたしました「「業務及び財産の状況等に関する報告」の追加報告」の中の内容であると存じております。
 足利銀行におきましては、同行の旧経営陣による平成十三年三月期の違法配当事案に係る刑事責任につきまして、平成十七年二月に旧経営陣に対する民事提訴の際に考え方を公表しております。その際、内部調査委員会の報告を検討した結果、違法配当事案の刑事責任追及については、民事と刑事の要件の相違もあり、慎重を期すために、捜査機関に対し証拠資料の提供など積極的に捜査に協力し、当行としての責務を果たしていくという旨を公表いたしまして、対応を図ってきたところでございますが、結果といたしまして、平成十八年六月をもって時効が成立したものであると承知しております。

○階委員 同じ金融機関の破綻で経営陣の刑事責任が追及されたケースの中に、私が勤めていた長銀のケースもあります。同じく違法配当の事案でございました。そのときは、私の記憶によれば、平成十年の十月に特別公的管理になって、翌年の六月には経営陣が逮捕、そして起訴されたというふうな、かなりスピーディーにやられたわけでございます。今の話を聞いておりますと、結構慎重な対応をしておるようなことでございましたけれども、そのときはかなりスピーディーにやられて、最終的にこの事件はどうなったかといいますと、報道とかでも御案内のとおり、無罪という結論になったわけでございます。
 今にして思うと、この長銀の事件については非常に拙速な、しかも、私、きょう毎日新聞のコピーを手元に持ってきました。三月二日月曜日の朝刊でございましたけれども、このとき逮捕された人の中に当時の頭取の大野木さんという方がいらっしゃるんですけれども、国策捜査だったということだというふうに断言されています。今も怖いんですよというふうにコメントされております。そういう国策捜査というふうに本人がお感じになるようなやり方で、結局、拙速に逮捕、起訴されて、そして無罪になっている。
 こういうことを考えると、足利銀行さんの場合は慎重にやる、これはこれで非常に大事なことだと思いますし、それはいいことだと思いますけれども、今振り返ってみますと、長銀についてはもっと慎重にやるべきではなかったのかという気持ちを持っております。刑事告訴までする必要がなかったのではないかということを考えているわけでございますけれども、その点について大臣のお考えはいかがでしょうか。

○与謝野国務大臣 やはり裁判所の判断を仰がなければならないという事案と判断して最終的に起訴をされたわけでございます。これは、起訴をするというのは別に有罪と断定するという行為でありませんで、あくまでも裁判所で御判断いただくべき事項であるという判断であると思っております。
 したがいまして、長銀の事件については、起訴する国側としては起訴すべき案件だと判断したわけですけれども、これは、起訴というのは訴を提起するということであって、裁判所の判断を仰ぐということでございますから、それ自体は私は適切な判断であったと思っております。

○階委員 今、非常に大事なお話をいただきました。これは、別に起訴されただけでは有罪という話ではなくて、裁判所の判断を仰ぐ行為にすぎないということでございました。
 今ちょうど、小沢代表の秘書の問題、起訴された直後ということでございますけれども、こちらについて、やはり世の中の反応が、起訴されただけであるにもかかわらず、もはやもう有罪である、極悪非道であるかのような報道がされているわけでございます。今の大臣の答弁というのは、まさに正論でございまして、ぜひそのような考え方を世の中に普及させていかなくてはいけないというふうに思っております。
 また、事件の性質につきましても、私、長銀にいたものですから、この秘書の問題の事件を見ましたときに、全く同じ構図というか、かなり似た構図だなと思いました。長銀の事件のときも、これは企業の決算でございますけれども、従来の会計処理を行っていたものが、ある日突然、これが違法だということで、粉飾決算であるとか違法配当であるというふうに検察から起訴されたわけでございます。
 今回は政治資金収支報告書の話でございますけれども、これも、従来から同じような処理を行っていたにもかかわらず、ある日突然、これが違法だというふうに検察から言われて起訴された、こういうことで、私は非常に似通った構図にあるかと思っております。
 そういう中で、今大臣が言われたとおり、起訴というのは一つの裁判所のアクションを求める行為なんだという位置づけでお話になられましたけれども、まさしく今回の事件も、この事件、私は有罪ではなく無罪になる可能性が極めて高いと思っておりますけれども、そういう意味では、起訴というのはあくまで検察の一つの意見、裁判所の判断を求めるための一つのアクションだということを確認させていただきたいと思います。