Heikaリオデジャネイロでオリンピックが始まり、早速、水泳、柔道、体操などで日本が金メダルを獲得しています。表彰式で掲げられる日の丸の国旗を目にし、演奏される君が代の国歌を耳にする度に、同じ日本人であることを自覚し、誇りと感動を覚えます。

この国旗、国歌と同じく「日本国の象徴」とされるのが天皇陛下です。ただ、国旗、国歌と違って天皇陛下は生身の人間です。ご高齢になった場合、象徴としての務めを果たし続けることがいかに大変かは想像に難くありません。8日、天皇陛下はビデオメッセージの形でお気持ちを表明されました。印象に残ったのは、憲法を守ろうとする姿勢と国民に寄せる思いの深さです。

憲法上、「天皇は国政に関する権能を有しない」とされ、その地位は、「主権の存する日本国民の総意に基づく」とされています。その点に配慮し、お言葉では「生前退位」など具体的な皇室制度のあり方に触れることはありませんでした。

また、憲法では、天皇が「日本国の象徴」であるとともに、「日本国民統合の象徴」でもあると定めています。そこで、天皇陛下は、「自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じ」、「日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました」と述べられました。憲法を深く理解し、忠実に実践される姿勢に頭が下がります。

そして、天皇の象徴としてのお務めがかように重要で幅広いものであるからこそ、公務を限定したり天皇の行為を代行する摂政を置いたりすることは好ましくないという趣旨のことも述べられています。

天皇陛下は、「天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合」も想定し、国民の暮らしに様々な影響が及ぶことも懸念されました。思い起こせば昭和天皇の容態が悪化したとき、ちょうどソウルでオリンピックが開催中でした。日本がメダルを獲得してもお祝いムードが自粛されたり、一部のCMの放送が中止されたりしたことがありました。

ここまで配慮され、天皇陛下は、「これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、合いたずさえてこの国の未来を築いていただけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」て国民の理解を求め、お言葉を閉じられました。憲法と国民を思う天皇陛下のお気持ちを真摯に受け止め、国会は憲法改正を進める前に、生前退位のあり方など皇室典範の改正を議論していくべきです。