「ノブレス・オブリージュ」とはフランスの言葉です。直訳すると「高貴な人は義務を負う」となりますが、財産、権力、社会的地位に恵まれた人は、特別な責任を負わなければならないという意味です。立法、行政、司法という国家権力に携わる、国会議員、官僚、裁判官などはこの言葉を肝に命ずるべきです。

さて、国家公務員の給与を平成26年3月まで平均7.8パーセント引き下げる法案が与野党の修正協議を経て、2月中にも成立の運びとなりました。成立すれば平成24、25年度の合計で5500億円程度の経費が削減され、震災復興のための財源に使われます。復興のために多忙を極める官僚の皆さんには気の毒な面もありますが、仕事への意欲を失うことなく、ノブレス・オブリージュを果たして頂きたいと思います。

この法案と同時成立を目指しているのが、裁判官の報酬を引き下げるための法案です。22日の法務委員会では、この法案が審議され、私も質疑を行いました。他の議員からは、憲法が「裁判官の報酬は、在任中、減額できない」と定め、裁判官の独立に配慮していることからして、国家公務員と同じように引き下げるのはいかがなものかというご意見もありました。

しかしながら、司法は、報酬のみならず、数すなわち定員も見直すべきというのが私の意見です。国会議員も国家公務員も定員を減らそうとする中で、裁判官だけが定員を増やそうとしているからです。私は、「法務省への出向者や最高裁の事務総局など裁判以外の仕事をしている裁判官がいる以上、定員を増やす理由がない」と主張しました。

答弁に立った最高裁事務総局の担当局長は、「裁判官は増やすけれども技能労務職員を大幅に減らしたので、司法全体で見ればできる限りの努力をしている」とのことでした。報酬も地位も高い裁判官を増やし、目立たない仕事で汗をかく職員を減らすのはノブレス・オブリージュに反するように思いました。

国会議員の定数削減や歳費削減については、「消費増税をお願いする前に身を切る姿勢を示す」ものとして議論されてきましたが、「本来ならやる必要はないけれども…」という後ろ向きのニュアンスが漂っている気がします。「ノブレス・オブリージュを果たす」と言った方が、与野党間で前向きな議論が行われ、早く結論が出るように思います。