コロナ対策のための第二次補正予算案の審議が来週から始まります。

既に執行されている第一次補正予算の目玉とされた中小企業向けの「持続化給付金」では、申請・給付に関する業務全般につき、政府は「サービスデザイン協議会」という運営実態が分からない団体に発注しました。しかも、同協議会は政府から受け取った769億円のうち20億円を「中抜き」し、大半の業務を電通などに「丸投げ」していたことが判明しています。さらに、今回の補正予算案では、憲法の趣旨に反する、別の意味での「中抜き」と「丸投げ」が驚くべき規模で行われようとしています。

そもそも憲法は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」(83条)、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」(86条)と定めています。これらの定めは、国のお金は主権者である国民のものであり、国民の代表から成る国会の許可を抜きにして、政府(内閣)が勝手に使うことは許されないという「財政民主主義」の考え方に基づくものです。

ただし、国会閉会中に大災害が起きた時など、国会を召集して予算案を審議する時間がない場合もあり得ます。そこで、財政民主主義の例外として、一定の条件を満たせば、いちいち国会の許可を経なくても政府が自由に使える「予備費」(憲法87条1項)を設けておくことができます。予備費という仕組みは、国会審議を省略する意味で「中抜き」であり、国のお金の使い方を国会が内閣に白紙委任するという意味で「丸投げ」でもあります。

予備費が度を過ぎると、財政民主主義は骨抜きになってしまい、憲法の趣旨に反することになります。昨年度までで、予算に占める予備費の割合がもっとも大きかったのは、「リーマンショック」があった麻生政権のときで、本予算88.5兆円の1.5%にあたる1兆3500億円が予備費でした。今回の補正予算案は、全体で31.9兆円のうちなんと31.3%の10兆円が予備費です。「補正」というより「不正」予算と言わざるを得ません。

そして、これほど巨額な予備費を用意しなくても、国会の会期を延長すれば不測の事態に対応できます。政府はいつでも追加の補正予算案を国会に提出し、国会の審議を経て成立させることができるからです。にもかかわらず、政府与党から会期延長の提案はありません。

巨額な予備費を計上する本当の理由は「コロナ対策」ではなく、野党から国会での追及を受けることなく、「選挙対策」のためのバラマキをできるようにすることではないでしょうか。そうでなければ、この国難の時期に国会を閉会することなど到底できないはずです。