ILC(国際リニアコライダー)は、超電導加速器を用いて電子と陽電子という素粒子を超高速で衝突させ、宇宙の起源「ビッグバン」直後の状態を再現する実験施設です。地下100mの深さのトンネル内に全長20kmにわたって建設され、岩手の北上山地が候補地です。

昨年3月に文科省は「ILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続する」との見解を発表し、私もILC推進議員連盟の幹事として誘致に向けて取り組んできました。

ところが、①1月に日本学術会議が策定した大型研究計画の「マスタープラン」において、我が国が速やかに実施すべき「重点大型研究計画」に選ばれなかったため、ILCへの予算配分が難しくなるとの不安や、②2月に日本と英、仏、独で意見交換をした際、3国からILC計画への参加に消極的な回答がなされたため、建設資金の国際分担ができなくなるとの不安が生じてきました。

そこで、これらの不安を解消すべく、2月25日の予算委員会の分科会で萩生田文科大臣らに質問。①については、文科省の村田研究振興局長より、「重点大型研究計画」に選ばれなくても、その候補であったILCは、計画の卓越性や必要経費の調達計画を示すことができれば、文科省が大型研究計画の優先度を示す「ロードマップ」に掲載されうる。また、「ロードマップ」に掲載されなくても予算確保の可能性はあることが確認できました。

②については、実際に交渉を行っている文科省の増子審議官から「初めての意見交換だったので、いきなり『うちは貢献しますよ』というのは無理だったと思う。5月に策定される欧州素粒子物理戦略でILCに具体的な踏み込みがあれば考えも変わり得る」との答弁を得ました。併せて、2月20日のILCに関する国際会議の雰囲気として、「日本に対する引き続きの期待感があった」という印象も語ってくれました。

最後に萩生田文科大臣にILC推進の決意を尋ねたところ、「私はチャレンジした方がいいと思っている。(諸外国などの)皆さんが評価してくれることが極めて大事だと思うので、文科省として引き続き努力していきたい」旨述べました。

未知の脅威である新型コロナウィルスで日本全体が先の見えないトンネルの中にいるような状況です。未知の世界を探求するILC計画も、学会の反対などで先が見えない時期もありましたが、徐々に希望の光が強くなってきた感があります。まずは欧州諸国の協力も得て政府によるILC誘致決定という出口にたどり着き、一刻も早くILCに必要な本物のトンネルを掘る段階に進みたいと思います。