新型肺炎の感染防止のため大勢の観光客を乗せたクルーズ船が停泊する横浜港では、横浜市がカジノ付きIR(複合観光施設)の誘致をしようとしています。1月に私も現地に行きましたが、地元では反対の声が強く、カジノなしでも十分な経済効果と税収増加が見込める「ハーバーリゾート」の提案もあります。なぜカジノにこだわるのか疑問に思いました。

そこで4日の衆院予算委員会では、安倍首相に対し、過去の国会答弁を踏まえ、「今、なぜIRなのか?」というテーマで様々な角度から質問しました。第一に、カジノで行われる賭博行為の違法性につき首相の認識を尋ねました。首相は、賭博の違法性に関する最高裁の判例があることを紹介しましたが、自らの見解は述べません。

関連して、「国が特定の者に特定の区域のみでカジノを認めるIRは『カジノ利権』を生み出し、これに群がる人々による違法行為の温床になるのではないか」と問うと、首相は、「違法行為の温床にならないようにしなければならない」と答弁。すでにカジノ事業者から何人もの政治家が違法な資金を受け取っている疑惑には触れようとしません。

 第二に、カジノの弊害として、①賭博による散財、借金、家庭崩壊、②周辺地域の風俗環境悪化、③国民の財産の海外流出を指摘し、客がカジノで使える金額に上限を設けたり、カジノ事業者の最終利益に制限を設けたりすべきではないか、と提案しましたが、首相と担当の武田大臣は、その考えがないことを明らかにしました。

 第三に、IRが観光や地域振興にとって本当に役立つかを首相に確認。IRではカジノで得た収益の一部をIR内のホテルやレストランの割引・優待に使え、他の観光地と比べて競争上有利です。さらに、IRには国内最大級の展示場やホテルを設けることが求められるため、需要が大きい東京周辺など大都市圏にしか立地できそうにありません。その結果、IRに内外の観光客も働く人も吸い寄せられ、地方の人口減少がますます加速しそうです。

この点について首相の認識を尋ねたところ、「なんとか地方へという流れをつくっていきたいが、私の感じでは、IRをつくるということが特別そうした流れを阻害する要因になるとは考えていない」との答弁。何の根拠もなく心配ないと言われても、説得力がありません。

結局、「賭博特区」ともいうべきカジノ付きIRが、日本全体の観光や地域振興に効果があるという十分な根拠はなく、他方、カジノ事業者らによる違法行為や暴利行為を防ぐこともできないことが明らかになりました。「百害あって暴利あり」のカジノ付きIRを日本に上陸させる必要はありません。