米国がイランとの核合意を離脱し、原油禁輸措置を行った対抗措置として、イランは核兵器に必要なウランの濃縮活動を強化してきました。6月には日本企業が運行するタンカーが攻撃されるなど中東地域の緊張が悪化。米国は、船舶の航行の安全確保などのために「有志連合」を作り、日本にも参加を呼び掛けてきました。

これに対し、日本は「有志連合」には参加しないとしつつ、防衛省設置法に定められた「調査及び研究」の一環として、自衛隊員200名以上が乗り込む護衛艦や哨戒機を中東地域に派遣し、米国とも連携を図る方針です。政府は、調査・研究目的の派遣である以上、国会で議論する必要はないとして、来週にも閣議決定で自衛隊の中東派遣を決める予定です。

安倍首相は、イランのロウハニ大統領にも、調査・研究だとして自衛隊派遣を容認してもらう考えのようです。しかし、本当に調査・研究が目的だとしたら、武器使用はできないため、これほどの隊員や装備は必要ないはずです。「調査及び研究」は、国会での議論を避け、イランからの非難を免れ、国民の関心を高めないための口実に過ぎないように見えます。

19日、私と立憲民主党の逢坂代議士は、今回の自衛隊派遣の真の目的や危険性を問うため、弁護士の団体と共に防衛省の幹部と面談しました。まず、「今回派遣予定の自衛隊の規模や装備は調査・研究にそぐわないのではないか」と尋ねると「自衛隊の調査・研究の方法は、他の役所とは違う」との答え。これでは調査・研究と称して、何でもできてしまいそうです。

また、調査・研究中に不測の事態が発生した場合、新たな閣議決定を行って「海上警備行動」を発令し、武器の使用を認めるとのことです。これに関し、「武器の使用も想定される場所で調査・研究を行うのは、おかしいのではないか」と指摘すると、「現在、不測の事態が発生すると考えていない」との答え。しかし、この答えは、現に中東海域でたびたび船舶が攻撃され、航行の安全を確保するために自衛隊を派遣することと矛盾しています。

そもそも日本の船舶が攻撃されたら、政府はすぐに海上警備行動を発令し、新たな閣議決定は形だけになりそうです。その意味でも単なる調査・研究ではありません。さらに、6月の日本企業のタンカー攻撃につき、米国はイランの仕業だとしています。もしも外国が攻撃を仕掛けてきた場合、海上警備行動では対応できません。自衛隊員の命も危険にさらされます。

法の抜け穴を突くようなやり方で、自衛隊員に命がけの「調査及び研究」をさせるのは、あまりに姑息です。まずはイランとの友好関係を生かし、自衛隊の派遣をせずに中東地域の緊張を緩和させる方策について、調査・研究するべきです。