16日は敬老の日。週末は各地で「敬老会」が開催され、私もお招きを受けた会に参加しました。本来であれば、ご高齢となった先輩世代の長年のご労苦に対し、後輩世代が敬意を表し、長寿をお祝いするのが「敬老会」の趣旨のはずです。

しかし、人手不足が深刻化する中、本来お祝いされるべき世代の方々が「敬老会」を運営する姿が目立つようになりました。一方で、お祝いの対象として招かれた方々も、お仕事などで忙しいのか欠席が増えてきました。これでは「敬老会」というより「敬労会」です。

総務省の統計を見ても、65歳以上の高齢者が増える中、収入を伴う仕事をした人の割合は東日本大震災があった2011年から昨年まで7年連続で増加し、男性は27.5%から33.2%へと約6ポイント増加、女性は13.0%から17.4%へと約4ポイント増加しています。その結果、65歳以上の就業者は862万人と過去最高になりました。

ただし、働く高齢者のうち4分の3はフルタイムの仕事ではなくパート・アルバイトなどの非正規雇用を選んでいて、その最大の理由は「都合のよい時間に働きたい」というものでした。安倍政権は内閣改造で「一億総活躍」担当大臣を相変わらず任命し、もっと高齢者を働かせたいようですが、「敬老会」の運営も困難になるような働き方を国民は望んでいません。

「人生100年時代」と言われますが、寿命が長くなるにつれ、忙しく働く期間も自動的に長くする必要はないはずです。人手不足解消にとらわれて高齢者を過度に働かせ、健康寿命が短くなってしまえば、国民にとっても国や社会にとってもマイナスです。今後ますます高齢者は増えます。国は、健康寿命をいかに伸ばすかを優先すべきです。

健康寿命を伸ばすには、栄養と特に歯の健康に留意しながら、適度に身体を動かし、孤独にならない生活を送ることが重要だと言われます。65歳までの現役時代は生計を立てるためにフルタイムで働くにせよ、65歳を過ぎたら自分のペースで働く日時を選ぶことができ、相応の収入を得ながら仲間づくりもできる。そんな「生きがい就労」の機会を増やし、健康長寿社会につながる取り組みを、国は積極的にするべきです。

具体策として、シルバー人材センターの業務を改めて登録会員以外にも「生きがい就労」の機会を提供し、最低賃金以上の収入を保証するようにしたり、企業が「生きがい就労」のために従来の業務を分割して時間単位で勤務できる仕事を創った場合、国が補助金を出したりすることなども考えられます。「生きがい就労」を通じて健康長寿の方がどんどん増え、みんなで「敬老会」を祝える国と地域を創っていかなくてはなりません。