11日、麻生財務金融担当大臣は、老後の生活費が約2000万円不足することなどが記載された報告書を「受け取らない」ことを表明。この報告書は、政府の諮問機関である「金融審議会」の作業部会がまとめたものです。もともと麻生大臣からの諮問に基づいて作られたものでもありました。目前に迫った参院選挙で与党が不利にならないため、「火消し」に走ったことは火を見るより明らかです。

その後、この問題は連日のように国会や報道で取り上げられています。政府が「火消し」をしようとすればするほど「火に油」を注ぎ、尻に火が付いているように見えます。それは、森友・加計問題や統計不正問題などで見られた、以下のような安倍政権の体質が今回の件でも如実に表れ、さらに悪化しているからではないでしょうか。

第一に、「あったことをなかったことにする。」

過去の問題でも、安倍政権は公文書を隠ぺいしたり、改ざんしたりして、実際にあったことをなかったことにしてきました。しかし、これらはまだ公表されていない文書に対してなされたものです。すでに公になっている文書をなかったことにするとは、言語道断です。

第二に、「トカゲのしっぽ切りで済ませる。」

麻生大臣も当初は、報告書の意義を強調し、金融庁を守る姿勢を示していました。しかし、問題が大きくなると態度が一変。14日の記者会見では「(金融庁の)現場で作業していた人たちが、もう少し丁寧にやれば良かった」などと述べ、その日の衆院財務金融委員会の冒頭で金融庁の局長が謝罪に追い込まれました。都合が悪くなるとトップは逃げ、現場の官僚などに責任を押し付ける。またいつもの手口です。

第三に、「庶民感覚とかけはなれている。」

同委員会でのやり取りで、麻生大臣は自分が年金を受給しているかどうかも分らないことが明らかになりました。「年金がいくらとか、自分の生活として心配したこともない」という答弁もありました。老後のお金の不安など麻生大臣にとっては無縁の世界なのでしょう。2000万円を蓄える大変さを知っていれば、こんな報告書にはならなかったはずです。

私自身は「老後2000万円不足」の問題はなかったことにするのではなく、しっかり向き合うべきと考えます。報告書をなくすより老後の不安をなくすことに力を注ぐべきです。前回述べたリバース・モーゲージの活用策や、麻生大臣のように年金の有無を気にしない豊かな高齢者については年金制度を支える側に回って頂くことなど、自助だけでなく共助も考えた老後の不安解消のための仕組み作りに取り組んでいきます。