衆議院法務委員会では、民事執行法の改正案が審議されています。その中には、離婚後の子どもの養育費や殺傷事件の損害賠償金などの逃げ得を許さないため、支払義務が確定している者が裁判所に呼び出され、自己の財産状況についてうそをついた場合、厳しい罰則を科すことが含まれています。

しかし、いくら法律を変えて罰則を厳しくしても、起訴をする権限を持つ検察官に罰則を適用する気がなく、いい加減な捜査しかしなければ無意味です。現に、森友事件では国有地を不当に安く売却して国民に損害を与えた背任罪の疑いや、公文書を改ざんしたり廃棄したりした公文書変造罪・毀棄罪の疑いがあったにもかかわらず、検察は関係した官僚を全員不起訴としました。

この検察の姿勢に対し、先月末に一般市民から選ばれた11人から成る検察審査会は、捜査が中途半端に行われたことを指摘し、やり直しを命じる「不起訴不当」の議決をしました。そこで2日の法務委員会で、検察庁を所管する山下法務大臣に対し、この議決に関する見解を求めたところ、「検察当局は、適正にその後の手続を進めるのであろう」と他人事のような答弁。

カルロス・ゴーン容疑者に対し、検察は海外の関連会社の預金口座まで徹底的に調べ、会社に損害を与えた背任の疑いで4度目の逮捕をしました。森友事件では、国民に損害を与え、国民や国会を欺いた疑いがあるのに、ゴーン事件で見せる検察の本気度が感じられません。「忖度捜査」ではなく、国民の理解と納得が得られる捜査の実行と起訴の判断をすべきです。

検察捜査に続き、公共事業についても「忖度」が問題となりました。しかも、選挙演説中、有権者の前で「私が忖度した」と堂々と自白したのです。自白した人物は、道路の建設を所管する国交省の塚田一郎副大臣。彼によると、忖度したのは安倍首相と麻生財務大臣のご意向であり、忖度した結果、安倍氏と麻生氏の地元を結ぶ道路を国の直轄工事にするための予算が付いたとのこと。

副大臣は特別職の公務員であり、憲法15条2項により「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定められています。自白が本当なら憲法違反、自白がうそなら有権者を欺いたことになり、いずれにせよ副大臣を辞任するだけで済む問題ではありません。それ以上にあきれるのは、安倍首相らへの忖度を自慢話にする神経です。

安倍政権下で行政の中立公正性という常識が失われています。各地で統一地方選が行われていますが、選挙権は「忖度」のない政治を選択し、常識を取り戻すための国民の権利です。