エネルギー、食糧、原材料などを海外に依存し、豊富にあると思われてきた水ですら、雫石のペンション村のように水道の維持が困難となる地域が出る中で、日本の社会と経済を維持していくには人口減少を食い止めるしかありません。人口が減れば、①働き手不足、②買い手不足に加え、③海外に輸出して外貨を稼ぐことができるような画期的な商品やサービスを生み出す人材も不足し、経済が落ち込み、社会全体が貧しくなります。その結果、ますます人口減少が進むという悪循環に陥ってしまいます。

先の臨時国会で強行採決された「入管法改正案」は、①の働き手不足を解消するため、専門能力を持たない外国人も日本で働ける「特定技能1号」という在留資格を設けました。しかし、最長5年で母国に帰るため賃金が上がりにくいことに加え、家族帯同が許されず仕送りが多くなることから、②の買い手不足の解消にはつながりません。また、専門能力を必要としないため、③の画期的な商品やサービスを生み出す人材不足の解消にもつながりません。

そもそも「働き手不足」という問題が生じるのは、国内や海外に商品やサービスの需要があればこそです。②、③の問題が解決されなければ、いずれ国内や海外の需要が減って「働き手不足」もなくなり、外国人受入れが必要ないほど日本は貧しい国になってしまうでしょう。

これに対し、岩手県内に建設が計画されているILC(国際リニアコライダー)は、世界最先端の大型研究施設であり、周辺には世界各国から多くの優秀な研究者、技術者が家族も含めて居住する、国際科学都市ができます。建設期間の10年は毎年約400億円、運営期間の20年は毎年約200億円を日本側が負担する必要がありますが、居住する研究者などの消費やILCを使った研究が生み出す商品やサービスの付加価値などによる経済効果は2.4兆円~2.6兆円と、投資額の3倍程度の見返りが推計されています。

上記の②、③の問題の解決にもつながる外国人の受入れ政策ですが、日本学術会議は、11月に公表した「所見」案で、ITの発達で研究者は現地に常駐する必要がないなどとして国際科学都市の成立を疑っています。しかし、欧州にある研究施設の例や実際の研究に携わった方のお話では、1万人近い規模の国際科学都市ができることは間違いないようです。

私も役員となっているILC建設推進議員連盟の会合が7日に開かれ、ILCの国際的な設計と研究を推進する研究者団体(LCC)のリン・エヴァンス代表から、来年3月7日までに日本政府の取組み方針を示して欲しいとの要請がありました。その場しのぎで日本を貧しくする外国人受入れ政策ではなく、持続可能で日本を豊かにする外国人受入れ政策の実現を目指し、全力を尽くします。