インドネシアのスラウェシ島北部で起きた地震と津波から10日が経ちました。多くの貴い命が失われ、海岸沿いは一面がれきの山になっています。その光景を見ると東日本大震災の直後を思い出します。ただし、大きく違うのは、いまだに救援物資の配給が滞り、水も電気も通信も途絶えたままの地域が多く、略奪や暴動を防ぐため大勢の治安部隊が現地に派遣されていることです。

被災した範囲や規模を比べれば、東日本大震災の津波被害の方がはるかに深刻だったようです。それでも被災した方々が冷静に行動し、官民挙げて着実に救援活動とライフラインの復旧を進めていたことを思い出し、改めて日本という国の素晴らしさを感じました。

しかし、あれから7年半を経て高齢化と少子化が進み、日本では若い労働力がどんどん減少しています。日本に生まれ育った人たちだけで今後生じうる大災害を乗り越え、日本の国力を維持できるのか、国民全体で考えなくてはならない時期に来ています。

現在、インドネシアをはじめ、すでに多くの国々の若者が日本中の様々な職場で働いています。しかし、その多くは留学生や技能実習生として来日した若者です。日本に滞在中に専門の知識や技能を身につけ、母国に戻って活躍してもらうというのが本来あるべき姿です。母国の大災害の復旧・復興に貢献できる人材を、人手不足の穴埋めとして活用するようなことは避けるべきです。

この点、国内の人手不足の解消のため、安倍政権は留学生や技能実習生とは別に、「一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる新たな在留資格」を設けようとしています。しかし、プロ野球の外国人選手などと違い、一定水準以上の日本語能力が求められる一方で家族の帯同は認められません。また、いくら「一定の専門性・技能を有する外国人材」であっても、人手が絶対的に足りない業種でなければ在留資格が認められません。

逆に、そのような業種であれば、技能実習生を終えた外国人であっても在留資格を認め、母国よりも日本で働いてもらおうとしています。外国人の立場からすると、自分たちが活躍の場を与えられるのではなく、日本に活用の場を与える制度だと思うのではないでしょうか。これでは、若く有能な外国人が将来にわたって日本に来てくれるのか疑問です。

新たな在留資格を定める「入管法改正案」は、10月下旬から始まる臨時国会に提出され、法務委員会で審議されます。この委員会で私は理事になる予定です。外国人が「活用」されるのではなく「活躍」する制度となるよう、正すべきはしっかり正したいと思います。