今年は、日本経済を揺るがしたリーマンショックから10年、私の勤務していた日本長期信用銀行など大手銀行が経営破たんで国有化されてから20年の節目の年に当たります。いずれも問題の発端は不動産関連融資の焦げ付きからでした。

今般、「シェアハウス」と呼ばれる賃貸物件など、投資用不動産の購入資金を多額に融資して高収益を上げ、当時の金融庁長官に「地銀のお手本」と評されていたスルガ銀行で巨額の焦げ付きが発生しました。すでに720億円の損失を計上しています。

しかし、同行の投資用不動産向け融資残高1兆9千億円の中の4%弱に過ぎません。約束通りの賃料収入が得られず延滞した債務者への債務免除などで、さらに損失は拡大しそうです。また、これまでスルガ銀行の稼ぎ頭であった投資用不動産融資からの利益が今後期待できなくなるため、巨額の損失を取り戻すだけの利益を上げるのは当分困難です。

こうしたスルガ銀行の苦境を招いた原因は何か。7日に公表された第三者委員会の調査報告書などから、驚くべき経営実態が明らかになりました。

①創業者一族が経営権を握り続け、必要な情報が経営陣に伝えられる組織を作らず「雲の上から下界を見ていた」

②営業現場の上司は、担当者に利率7%以上の無担保ローンを1か月で10億実行することなど過剰なノルマを課し、時に「数字ができないなら、ビルから飛び降りろ」「(目標を達成しなければ)家族皆殺しにしてやる」などと脅迫

③営業担当者は、ノルマ達成のため融資見込み客の資産や年収を偽装したり、賃貸物件の入居状況を偽ったりすることで行内の決裁を得て融資を実行

など華々しい業績とは裏腹に、銀行内の各層にわたり民事上も刑事上も責任を問われかねないような不正、不当な行為のオンパレードでした。本来は「反面教師」とするべきスルガ銀行について、内実も調べず「お手本」と称賛して同行の暴走を助長し、他の地銀もこれを後追いしかねない状況を作った金融庁のあり方を検証したいと思います。

そして、反社会的な行為が行われた背景には、日銀がマイナス金利などで金融機関の経営環境を悪化させたことがあります。2年で終えるはずだった「異次元の金融緩和」を5年半も続け、金融機関と顧客に悪影響を及ぼし続ける日銀の責任も問わなくてはなりません。