夏の甲子園の地方予選が始まりました。今年は第100回の記念大会になります。東京、北海道に加え、特別に神奈川、大阪など7府県は代表が2校、他の県は例年通り1校ずつとなります。全都道府県から最低1校は代表が選ばれ、自分のふるさとのチームを応援できることは、多くの国民が高校野球を愛する大きな理由ではないかと思います。

さて、3年に1度行われる参議院議員の通常選挙も、以前は全都道府県から最低1人は代表が選ばれる制度でした。しかし、前回から制度が変わり、鳥取県と島根県、徳島県と高知県は、いわゆる「合区」により2県で1代表となりました。人口減少によって人口の多い都市部との間で「一票の較差」が拡大したためです。

この流れでいくと、いずれ岩手県も近隣の県と2県で1代表となりそうです。選挙の結果、参議院議員が選ばれなかった県では、地元の声が国政に届きにくくなり地域の衰退につながるのではないか。そんな問題意識から、参議院改革協議会では来年の選挙に向けた選挙制度の見直しが議論されてきました。

各党から様々な提案がなされる中、6月13日に自民党が出した案は、参議院の定数を埼玉選挙区で2、全国比例で4増やし、全国比例候補のうち一部の者については、得票数にかかわらず優先的に当選させる、というものでした。27日の党首討論で安倍首相は、今回の提案の理由につき、「一県に一人の代表は必要であるという声も地方から強い」と説明。

しかし、この案では合区はなくならず、各県の民意で代表を選ぶことにはなりません。「合区になった県は選挙区ではなく全国比例で代表を出せばよい」という考え方に立つのでしょうが、「全国」比例と矛盾します。しかも、人口減少で合区が増えるほど、比例の定数を増やすことにつながり、国民の理解は得られません。まさに偽りの「一県一代表制」です。

この問題については、合区をなくして本来の「一県一代表制」に戻した上で、「一票の較差」により選挙が無効とならないよう、参議院議員を「地域代表」と位置付けるための憲法を含めた法改正を検討し、次々回(4年後)の参院選から導入すべきです。ちなみに、米国の上院議員は、人口規模の大小にかかわらず各州から2人ずつ計100人が選出されます。

日本もこれを参考にすれば、人口減少が進む中で国会議員の数が増えるという異常事態を防ぐことができます。偽りの「一県一代表制」によって人口減少が進んでも国会議員を増やし続けるのか、本来の「一県一代表制」によって国政に地方の声を反映し人口減少を食い止めていくのか、そこが問われています。