「悪貨が良貨を駆逐する」ということわざを、最近よく思い出します。うそがばれないように平気で証拠を隠したり、捨てたり。ようやく出てきた動かぬ証拠にも、ろくな根拠もなく「そんな事実はない」「自分は関係ない」と言い切る。日本のリーダー、エリートと言われる人間がこの有り様では、一般社会にも当然、悪影響が及びます。

日大アメフト部の指導者の醜態はその象徴かもしれません。しかし、日本には、まだまだ「良貨」も存在します。仕事上のやり取りを丁寧に記録し、国会に開示した地方公務員。被害者に誠意を示すため、公の場で素直に過ちを認めた20歳の若者。このような「良貨」を広め「悪貨」を駆逐して、公正な社会を築く。これこそが国政の重要な任務だと思います。

さて、不動産登記制度は土地や建物の権利者を世の中に知らしめ、不動産の売買や利用を円滑・公正に行うための仕組みです。ところが、権利者が亡くなった後に相続登記がされず、登記上の権利者と本当の権利者が食い違うケースが増えてきています。このことが、所有者不明の土地問題や管理者不在の空き家問題につながっています。

そして、相続登記が何代にもわたって行われないと法定相続人もねずみ算式に増えます。その中で相続登記を進めようと思った人がいたとしても、誰が権利者かを調べ、それぞれに連絡を取り、登記に必要な書類を揃えるには膨大な費用と時間がかかります。結局、相続登記は先送りされ、ますます登記が実体とかけ離れていきます。このままでは、不動産登記も「悪貨が良貨を駆逐する」状態になりかねません。

そこで、22日の国土交通委員会の質疑で、相続登記を促すための提案を行いました。

まずは、現在、相続登記が済んでいない不動産については、個々の求めがあれば登記官が権利者を調査すること。加えて、相続登記をした上で建物を新築、改築などした場合に、期間限定で国が補助金を出すなど、相続登記をするメリットを高めること。

さらに、将来、相続が発生した場合に相続登記を確実にしてもらうため、権利者が亡くなったら、登記官から法定相続人全員に対し、遺産分割の協議や相続登記を促す通知をしてもらうこと。

他の提案も併せ、その骨子を、政府提出の「所有者不明土地の利用円滑化法案」の附帯決議に盛り込んでもらいました。これからも登記が実体を反映し、被災地の復興事業をはじめ不動産の利用が円滑に進むよう、制度改善に取り組んでいきます。