27日、佐川前理財局長の証人喚問が衆参両院の予算委員会で行われました。証人喚問の証人は、刑事裁判と同じく、自己が「刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある」証言を拒否することができます。

森友学園との土地取引に関する決裁書の改ざんは公文書変造などの犯罪となりえます。よって、佐川氏がこれに関与したかどうかにつき証言を拒むことはやむを得ません。しかし、「改ざん前の決裁書を見たか」という質問にまで答えないのは行き過ぎであり、証言拒否の罪に当たる可能性があります。また、自民党の丸川参院議員による「総理は関与していませんよね」という質問は明らかな誘導尋問であり、刑事裁判であれば裁判長が撤回を求めるところです。

ところが、証人喚問の進行は、裁判官と違って公正中立ではない自民党の委員長が担っています。佐川氏や丸川氏の不正は放置されたまま証人喚問は終わりました。空しさを感じると共に、事件を適正かつ迅速に裁く裁判官の役割の重要性につき、改めて認識させられた喚問でもありました。

さて、その裁判官に近年人材が集まらなくなっています。この5年で司法修習を終えて裁判官に採用された人が約100人から65人に減少しました。司法試験の合格者も一時期よりは減少しましたが、それでも1500人以上います。私が司法試験に合格した平成13年は合格者が千人弱でしたが裁判官に採用される人は100人を上回っていました。

なぜ、裁判官の採用が激減したのか。それは司法試験の志願者が激減し、多種多様な経験と才能を持つ裁判官にふさわしい人材が集まらなくなったからです。司法試験を誰もが受験できた頃は、競争は激しかった反面、そのような人材も集まっていました。しかし、現在ではお金と時間がかかる割に教育効果の乏しい法科大学院を修了しなければ原則として司法試験を受験できません。

30日の法務委員会の質疑で、私は、適正かつ迅速な裁判を実現するために裁判官の採用数を増やす必要があり、そのためには現在の司法試験の受験要件を改めるべきではないかと提言しました。これに対し、上川大臣は「平成30年度まで法科大学院の集中改革期間なので、その成果を検証していく必要がある」と危機感の乏しい答弁でした。

平成30年度が始まりましたが、法科大学院の入学者はさらに減少する見込みです。裁判官までが佐川氏や丸川氏のような不正を許すことのないよう、一刻も早く司法試験の仕組みを改め、多くの有為な裁判官が採用されるようにしなくてはなりません。